アンダーソン・パークが目指す、ネクストレベルのヒップホップ

アンダーソン・パーク 2018年7月ロンドンにて撮影(Photo by Hollie Fernando for Rolling Stone)


ー『マリブ』発表後の2年間で、他に学んだことは?

忍耐は美徳だってことだね。俺は自分のキャリアがゆったりとしたペースで、少しずつ上向いていったことは幸運だったと思ってるんだ。若いアーティストが一夜にして有名になったりすると、周囲の誰を信じていいか分からなくなるんだよ。急速な状況の変化についていけなくて、いろんなことがおざなりになってしまう。俺はそういうのを経験しないで良かったって思うよ。

ーあなたは世界中を飛び回っていますが、次作のタイトルには生まれ育った町の名前を選びました。その理由は?

そこに大切なものがあるからだよ。いろんな場所を訪れるようになったからこそ、自分の出発点を意識するべきなんだ。あともうひとつ、ビーチにちなんだ一連のレコードの終着点っていう意味もある。『ヴェニス』『マリブ』と来たら、次に向かうべきビーチはひとつしかないからね。

ー ドクター・ドレーとの共同作業はいかがですか?『2001』を聴いて育った身としては、感慨深いものがあると思います。

ドレーはヒップホップのゴッドファーザーだからね。学校の発表会でさ、他の子供達はテディベアのぬいぐるみやらお気に入りのおもちゃやらを持ってきてたんだけど、俺は必死で練習した「ドレー・デイ」や「ナッシン・バット・ア・G・サング」をみんなの前で披露したんだ。先生たちは目を丸くしてたよ。彼の音楽は俺のすべてだったんだ。彼がいなかったら、今俺はここにいないだろうね。今はヒップホップが一番人気のあるジャンルになったけど、俺にとっては昔からそうだった。自分がいつかドクター・ドレーと一緒にアルバムを作るなんて、当時は夢にも思わなかったけどね。

ードクター・ドレーの手がけたビートを選び放題というのは、ラッパーにとって夢のような環境だと思います。

その通りさ、マジで最高だよ。ごく一部の人間にしか与えられない特権だからね。ドレーはMPC1台でビートを組んでるわけじゃないんだ。いろんなミュージシャンをスタジオに招いて、その場で彼があれこれと指示を出すんだよ。どんなタイプの曲であれ、そうやって完成したトラックは紛れもなくドレーのサウンドになってる。彼は文字通りの完璧主義者なんだ。

ー新作にはマッドリブも参加すると聞いています。それは事実ですか?

その通りさ。マッドリブはいい仕事をしてくれた。未だ直に会ったことはないんだけどね。

ー本当ですか?

あぁ、彼に会ったことはないよ。マッドリブからビートを提供してもらうことができたのは、『Oxnard』にゲスト参加してるラッパーのおかげなんだ。実を言うと、彼から送られてきたビートを初めて聴いた時は戸惑ったんだ。紛れもなくマッドリブの音ではあるんだけど、俺がイメージしてるものとは少し違ったからね。マッドリブはビートを提供する場合、そのステムは渡してくれないんだ。こっちの判断でトラックの一部を差し替えたり、ミックスをやり直したりってことができないようにね。だから送られてきたビートをそのまま使う予定だったんだけど、ドレーがアルバムのミックスダウンをやってた時にその曲を聴いて、ステムを送らせろって指示を出したんだ。俺はマッドリブがそういう要望に応じないことを知ってたから、曲を完全に録り直すことになるだろうと思ってた。でもその翌日、彼からステムが送られてきたんだよ。

ーラップ好きとしては、マッドリブとドレーが参加しているというだけでも、ものすごく好奇心を掻き立てられます。

ドレーとマッドリブの両方が参加してる曲なんて、そうそうないもんな。そんなトラックをアルバムに収録することができて、俺は本当に幸せ者だよ。まさにアメリカンドリームさ。

ーファンの多くは、次作はあなたがスーパースターになる最大のチャンスだと考えているようです。ご自身でも意識していますか?

次回作ってだけで、それ以上でも以下でもないよ。俺にできることは、自分のすべてをこのアルバムに注ぎ込むことだけさ。アーティストはいつだって最新作で評価されるからね。最近はスタジオに籠もりっぱなしで、子供達と顔を合わせる機会もすっかり減ってるから、嫁は俺に腹を立ててるよ。でも今は、このアルバムが俺のすべてなんだ。

Translated by Masaaki Yoshida

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