再び結集したEストリート・バンドを従え、“ボス”ことスプリングスティーンが完成させた最新作。アルバムのオープニング曲「レディオ・ノーウェア」で、スプリングスティーンは何度も吠える。「まだ生きているヤツはいるかい?」……この呼びかけに応えるのは、強靱なビート、突き刺さるギター、そして豪快に轟くクラレンス・クレモンズのサックス。神々しいまでにラウドなナンバーだ。一方、アレンジ、パフォーマンス、プロダクションといったすべてにおいて、今作はノスタルジック。それは彼の初期作品を彷彿とさせる。60年代の黄金ポップスや、これに加えて、ビーチ・ボーイズの『ペット・サウンズ』(66年)のテイストまで揃っている。スプリングスティーンの75年の傑作『明日なき暴走』にあったような、ニュージャージーの街のアニキ的パワーが再びここにある。  彼に今一度こうしたエネルギーを注入した源になったのは、ブッシュ政権への怒りだ。スプリングスティーンはこれまで一度も、“逃げること”を歌ったことはない。これまでの名曲「成長するってこと」や「いとしのロザリータ」など、それらは全部“選択すること”と、“自由のための行動”を歌っていた。そして“ボス”が立ち上がる時には、いつもそこには最強の仲間、Eストリート・バンドがいるのだ。

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