スターバックス・コーヒーのレーベル、ヒア・ミュージックからの発売となる、ポール・マッカートニーの新作。当然、世界中のスターバックスには店内でこの作品が流され、ポールを知っている年齢層の人が店に押しかける。この点に着目したところは鋭い。冒頭を飾る「ダンス・トゥナイト」はあまりにもシンプルな曲だが、何度か聴くと、その単純なギターのリズムが耳に残って離れない。同じようにほかのどの曲も単純そうでいて、実はよく作り込まれた曲になっている。「エンド・オブ・ジ・エンド」では、老境に至った自分の境遇を逆手にとって笑い飛ばすところなど、作り手はやはり、あのいたずらっぽい少年のままのポールなのだとわかってしまう。64歳になって、これまで恋愛にかけるべき時間を、仕事に浪費してきたことを嘆いてみせたり。離婚調停中の男性側からのロマンティックな別れの言葉や、年配の愛人たちにかける言葉など、単純そうでいて、一筋縄ではいかない作品。

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