実に豊かで、ダークでもある作品が10曲揃ったビョークの新作。異次元的なエレクトロ・ビート、独特な節回しを聴かせるバラード、とりとめのない白昼夢のような内容をアフリカン・パーカッション、厚いホーンセクション、そしてエモーショナルで深い歌でもって聴かせる。要するにいつものビョークなわけだが、しかし、作品としてはこれまででいちばんゆるい雰囲気で、反復要素も多い作品だ。これまでビョークがやってきたことにすべて触れるアルバムでありつつも、01年の『ヴェスパタイン』のような一貫性には欠けている。ただ、今回はコラボレーションの相手をよく選んでいる。ティンバランドやマリのコラ奏者トゥマニ・ジャバティとの演奏などが、素晴らしい音楽的瞬間を生み出したりもしている。特にビョークが自爆テロリストについて歌った曲「ホープ」。ここでのボーカルは、彼女のこれまでの作品で最も無防備でかつ鋭いものだ。

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