ソングス・オブ・フェイス・アンド・デボーション(93年)

デペッシュ・モードは“未来からやってきたサイボーグの快楽マシーン”のようなバンドだ。彼らの音楽は、時代の中枢神経を、常に刺激し続けている。最近は、以前のようなペースでヒット曲を量産はしてくれない。だけど、うれしいことに、ここにきて旧作のリイシュー盤がリリースされた。しかもデジタル・リマスターに加え、DVD付きという豪華仕様なのだ。『ヴァイオレーター』や『ニュー・ライフ』といった人気作のリイシューももちろんだけど、今回オススメしたいのは、彼らの作品のなかでも特に過小評価されている3枚のアルバムだ。  『コンストラクション・タイム・アゲイン』(83年)は、誰もがデペッシュ・モードは終わったと思っていた時期に発表された一枚。初代ソングライターのヴィンス・クラークが脱退し、シンセサイザー・ポップのブームも終焉を迎えていた。だが、彼らはその時期を、新加入のアラン・ワイルダーの力によって乗り越えていく。  『ブラック・セレブレーション』(86年)は、その努力が報われた作品。当時のチャートでは無視されたが、ファンの間では昔から人気が高かった作品。ロック好きの間では『ヴァイオレーター』を推す人が多いけど、コアなファンからしてみると、この作品こそがデペッシュ・モードの最高傑作であろう。  『ソングス・オブ・フェイス・アンド・デボーション』は、93年の発表作。バンドのファンがグランジとテクノに分散していったころで、またしても誰もが彼らは終わったと感じていた……しかし、それもまた間違いだった。へヴィなギターがゴスペル風ロックを奏でる隠れ名盤となったのである。このアルバムをしばらく聴いていない人は、他の2つの再発盤といっしょに、聴き直してみるといい――今でも力強く響くサウンドに、きっとショックを受けるはずだ。

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