インフィニティ・オン・ハイ・星月夜

フォール・アウト・ボーイほど、リスナーの間で賛否両論のあるバンドも珍しい。その理由は、歌詞のほぼすべてを手がけているベースのピート・ウェンツ独 特の世界観にある。もちろん、ヴォーカル&ギター担当のパトリック・スタンプの歌い方は天才的だ。それに’80年代のラジオをにぎわせたヒット曲を彷彿 (ほうふつ)させるような少しモノ悲しいメロディも大きな要素。しかし、そのヴォーカルもウェンツ特有の、“生傷だらけのエゴをさらけ出す”という世界観 から生まれた歌詞がなければこれほど際立ってはこないはずだ。ふたりの異なる才能が合わさることで、初めてこのひどく風変わりなバンドのキャラクターが生 まれているのだ。 冒頭の曲「スリラー」で、ジェイ・Zがフィーチャリングされているイントロからもわかるように、このバンドはマジでトップを狙っている。バンドは有名になったし、その分だけ暴露されるゴシップも増えている。 いずれにしても、素晴らしいのはウェンツの書く歌詞であり、ウェンツがいればこそ、このバンドは成功するにふさわしい。それだけこの作品は“少年の日常に潜む秘密”を、血の気も引くほど正確なディテールにまで踏み込み、なおかつおかしく描いてみせている。

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