50セントとの同日アルバム・リリース対決が話題だった“奇才”カニエ。今作は約2年ぶりとなるサード・アルバムだ。これを聴けば、なぜ彼がヒップホップ界で最重要人物のひとりと呼ばれているのか理解できる。そんなカニエだが、これまでの彼のアルバムには弱点があった。それは構成の長さ、凝りすぎたプロダクション、といった点だ。それらが整理され、より密度が濃く、隙がない内容となっているのが今作だ。ほぼ大半の収録曲が、詞も曲も以前より確実に大きな進化を遂げている。もっとも、彼のこれまでのヒット曲「ジーザス・ウォーク」や「ゴールド・ディガー」のような、聴いた瞬間にヤラれてしまうようなビートのナンバーは、今作には1曲もない――にも関わらず(!)本作を一聴すれば、誰もがカニエを好きになるだろう。そして思うはずだ。「カニエ以外のヒップホップ・アーティストは、もっとハードな努力が必要だ」と。

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