ドラスティック・ファンタスティック

映画『プラダを着た悪魔』(06年)の主題歌でブレイクしたスコットランド系シンガー・ソング・ライター。彼女のセカンド・アルバムは、97年頃に流行った女性アーティストたち(アラニス・モリセットとか)のサウンドを彷彿させる――アコースティック・ギターいっぱいの音づくり、輪唱っぽい繊細なヴォーカル、なめらかなビート――。  ところで当時、アラニスとグウェン・ステファニー、どちらが10年後も生き残っているか?と尋ねれば、99%の人が「アラニス!」と答えただろう。あれから10年……結局、勝ち残ったのはグウェンだった。現代のKTタンストールは、グウェンの強さを兼ね備えたアラニスだと言える。つまり、「したたかなポップのテクニック」を持った、フォーキーでスマートなソング・ライターだ。今作で聴けるのは、密度の濃い内容がシャープに構築された楽曲群。その個性的な全曲に、それぞれ必ずキャッチーなサビを備えている。そして何よりKTが優れている点は、かつてのフェミニスト・シンガーたちのような「崖っぷち感」がない、ということだ。彼女は今が07年だということを十分承知している。そして「今この瞬間」の世界へ、リスナーからの注目を集めようとしている。

RECOMMENDEDおすすめの記事


MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE