ファーストアルバムが大絶賛されたカナダのモントリオール出身のアーケイド・ファイア。大注目のセカンド『ネオン・バイブル』の正しさと、奇妙さと、潔い欠点を説明できるのは、「オール・カーズ・ゴーズ」という曲。この曲は、道路などが存在しないエデンの園を築こうという、10代の少年少女の逃避願望を歌った、誰もが口ずさめるアンセムソング。03年のEPにも収録されていて、このときはあばら屋で見つけたアコーディオンに合わせたような素朴な曲だった。音の厚みとドラマ性をこれでもか、とばかりに加えた1曲「ノー・カーズ・ゴー」を聴くと、この過剰さは意図的なものだということが明らかになる。それは、僕たちは今、えも言われぬ不可解な状況のなかで窒息しつつあるということを表現しているのだ。残念なのは、ほかの曲がこういうダイナミックな過剰さの意図を効果的に伝えてはいないことだ。9.11事件の傷跡を歌う「ビルディング・ダウンタウン」で、ヴォーカルのウィン・バトラーは、「もうカワイイ存在はやめだ」と鋭く宣言する。「もう優しい人もやめだ」と。これが『ネオン・バイブル』を貫いている決意なのだ。ただ、ずっとそんなメッセージが続いていくわけではないのが惜しい。

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