デイドリーム・ネーション:デラックス・エディション

88年に発表されたソニック・ユースの『デイドリーム・ネイション』は、オルタナティヴ・ロック史にさん然と輝く記念碑的名盤として、今なお語り継がれるアルバムだ。当時は2枚組のアナログ盤で発売(とはいえ、収録曲はわずか14曲)されたこのアルバムは、のちのソニック・ユースのトレードマークにもなったノイジーなギター・サウンドが満載されている一方、ビートルズやラモーンズの曲と同じくらいキャッチーで口ずさみやすい楽曲で埋め尽くされていた。  本作の成功をきっかけに、当初インディ・バンドだったソニック・ユースは、メジャー・レーベルであるゲフィン・レコードとの契約を勝ち取ることになった。ゲフィンはその後、ヴォーカル兼ギターのサーストン・ムーアの助言を聞き入れ、カート・コバーン率いる、ニルヴァーナとの契約を交わすことにもなった。つまり、オルタナティヴ・ロックの歴史は、まさにこのアルバムから幕を開けたと言っても過言ではないのである。  今回のリイシュー盤は“デラックス・エディション”と銘打たれ、当時のバンド演奏によるカヴァー・ソングが計4曲追加で収録されている。マッドハニー(シアトル出身のグランジ・ロックバンド。ソニック・ユース同様に、ニルヴァーナのカート・コバーンがファンだったことでも知られる)の「タッチ・ミー、アイム・シック」、ニール・ヤングの「コンピューター・エイジ」、ビートルズの「ウィズイン・ユー・ウィズアウト・ユー」といったカヴァー曲からは、当時のバンドが試みていた野心的な実験性がうかがい知れる。さらには、全14曲のライヴ・ヴァージョンも完全収録。オリジナル盤を持っているファンにも、うれしい配慮になっている。 もちろんオリジナルのスタジオ・ヴァージョンも、まったく古びていない。完璧に構築されたそのギター・サウンドは、戦闘機から次々に投下されるクラスター爆弾級の衝撃度が今でもある。

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