カム・アラウンド・サンダウン

キングス・オブ・レオンの5作目の準備期間中、フロントマンのカレブ・フォロウィルは膨らみ続けるバンドの人気について、パブリシティに苛立ちを露わにした。しかし残念ながら、馬はもうすでに小屋を飛び出してしまったようだ。2008年の前作『オンリー・バイ・ザ・ナイト』は全世界で650万枚を売り上げ、彼らは今やいたる場所のアリーナでトリを務め、グラミーを受賞した「ユーズ・サムバディ」は、パラモアからトレイ・ソングスまでがこぞってカヴァーしている。もしもウィルコとマイ・モーニング・ジャケットがアメリカのレディオヘッドの座を競っているなら、キングス・オブ・レオンは(たとえボノが名誉永住権を持っているとしても)私たちのU2になるだろう。そして『カム・アラウンド・サンダウン』の巨大なサウンドも、(カレブのへりくだった態度を別にして)それをほのめかしている。
 バンドが大きくなっていく中でも、キングスの個性は失われてはいない。グループは自分たちのサウンドを、何度も微調整することに成功しているのだ。カレブの歌声も、滑るような、テネシーの酔いどれの美しさを残している。「バースデイ」を見よ。辺りにはクラブなんて無く、子供たちの鼻は血で汚れ、カレブがよろめき、笑って酒をこぼしながら彼女の家まで歩いていることを除けば、それは50セントの「イン・ダ・クラブ」の魂を持ったロック・ソングだ。南部の田舎風でバカバカしい「バースデイ」は、キングスの荒々しいガレージ・ロック時代のサウンドを思わせる。
 けれどもそれは、アクセルに足を乗せたバンドのバックミラーに、ほんの一瞬映った光景に過ぎないのだ。

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