サニー・コロンが語るソウルミュージック、初来日公演への想い「音楽はマジック」

サニー・コロン(Photo by Naoki Takehisa)

LA出身のシンガーソングライター、サニー・コロン(Sunni Colón)が、10月1日から東京、横浜、大阪のBillboard Liveでそれぞれ2ステージ、計6公演を行う。その音楽性は、R&B、ジャズ、ファンク、ロックを内包したダンサブルなものながら、無国籍でアブストラクトな印象も与える独特な浮遊感もある。今回、初めてのパフォーマンスとなる来日公演へ向けて話を訊いた。その甘く魅力的な歌声の奥には、様々な人生経験から得た確かな信念があるようだ。

―サニーさんが来日するのは今回が初めてなんですか?

いや、パフォーマンスするのは今回が初めてなんだけど、日本に来るのは3回目なんだ。これが最後の来日には絶対したくないぐらい、日本が大好きだよ(笑)。

―そうでしたか、それは失礼しました。日本のどんなところが好きなんですか。

すべてが好きだよ。人々も、ファッションも音楽もストリートも好きだし、好きな食べ物もラーメンとか焼き鳥とかたくさんあって、1つは選べない(笑)。できればもっと日本食について知りたいと思っていて、特に伝統的なもの、昔からある日本食っていうものを試してみたいと思ってるんだ。

―是非、今回の滞在中に日本の伝統食を経験してください。日本は3回目ということですが、デビューアルバム『Thierry Disko』(ティエリー・ディスコ / 2016年)の1曲目「Feel4U」の冒頭に女性の声で日本語のセリフが入っているのが驚きました。これはどういう意図があったのでしょうか。



冒頭の日本語のセリフは、とある映画のシーンから抜粋したものなんだ。当時結構日本の古い映画や、台湾、香港の映画を見ていて、ウォン・カーウァイ監督の映画を見たときに、「次はこれがおすすめですよ」って上がってきた映画で見て、いいなと思ったんだ。もともとサウンド自体がすごくエキゾチックに聴こえたというのもあったんだけど、自分はその頃にいろいろあって、ちょっと弱っていた時期だったんだよね。セリフの内容を簡単に教えてもらったら、そのときの自分の気持ちや、自分のみならず自分の周り人についても、リンクするところがある気がしたので、メッセージとしてセリフを入れたんだ。エキゾチックな音以上に、こういうセリフの声から伝わってくる感情とか気持ちからインスピレーションを得ることは、他にもたくさんあるね。

―あなたの音楽の中には、様々なフィーリングを感じ取ることができて、本当にいろんなジャンルの音楽要素が入った楽曲だと思いました。どんなきっかけでミュージシャンを志して今に至るのか、ルーツを教えてもらえますか?

子どもの頃、親や叔父さん叔母さん、ちょっと歳が離れたいとこが聴いていた曲だったりとか、いろんな曲を聴いていたし、思い返せば結構ビデオゲームの音楽とかも意外と印象に残っているね。あとは、ずっとスケードボードをやっていたので、所謂スケーター音楽もよく聴いていたかな。まわりの仲間もそれぞれ違うバックグラウンドがあって、それぞれが自分が好きないろんな音楽を持ち寄って、誰かが持ってきたCDを大きなデッキで聴いたりしたよ。ヒップホップ、ウェストコーストロック、サイケデリックロック、グランジ、アンダーグラウンドの音楽まで、とにかくいろいろな音楽を今まで聴いてきたと思う。なので、そういうのがすべて混ざって自分の中に影響を与えてくれているような気がしているんだ。背景とか違う文化とかも感じながら、だんだん自分でもギターを弾いたり曲を書いてみたいと思うようになって、曲を作るようになったんだ。それで、ローカルのアーティストのプロデュースをしてみたりとか、オンラインで人にビートを作ってあげたり、Myspaceを使っていろんな曲を出したりしているうちに、人々が聴いてくれて「自分でもやった方がいいんじゃないの?」っていう声もあったので、自分でやってみようと思ったんだ。


サニー・コロン(Photo by Naoki Takehisa)

―実際に自分で音楽をやってみて、いかがでしたか。

とにかく「常にベストな音楽を作る」ということだけを頭に入れて活動してきた感じなんだけど、何年やっても自分はまだまだ初心者で学ぶこともたくさんあるし、やることはたくさんある気がしてならないよ。

―謙虚ですね! サニーさんは幼少期から世界各地を転々としていたそうですが、どんなところでどういう生活をしていたのか教えてもらえますか。

自分の家族は大きくて、それぞれに結構結びつきがあったんだ。親と住んでいた時期もありながら、親戚と一緒に住んだり、家族の友だちと住んだりしたこともあった。例えば、スポーツの強いエリアがあったら「そっちのクラスに入ってやってみたら?」とか、「こっちの方が教育に向いてるから、こっちで教育を受けてらっしゃい」っていうこともあったり、あとは問題が起きないように「ちょっとこっちで静かに暮らしなさい」って言われたり(笑)。自分が大学を出た後は、それこそいろんな暮らしをしてきたんだけど、仕事も辞めちゃってお金がなくて、ストリートでホームレスみたいな生活をしていた時期もあったんだ。

―そんな時期があったとは意外です。

もちろん良い時期ではないんだけど、気持ち的にはすごく落ちたっていう感じではなくて、今思い返すといろんなシチュエーションや自分が置かれた境遇っていうところからもいろいろと学ぶことがあったと思う。すごく大きかったのは、その国や地域によって生活のリズムというかテンポがあることなんだ。音楽もテンポがすごく重要だと思うんだけど、いろんな地域で生活のリズム、スピード、テンポを見てきたことは勉強になったし、いろんな人と接することによって、もちろんその人のこともわかるけども自分のことも比較してよくわかるようになるので、人間として自分のことをより知ることもできたし、全部が今、自分の音楽に繋がってると思っているよ。

―そういう経験がアーティストとしてのあなたを形成しているわけですね。楽曲を聴くとすごくメロウで聞き心地の良いボーカルを魅力的に感じました。ご自身では、自分をどんなアーティストだと思っていますか。

自分のことを話すのはちょっと恥ずかしくて苦手なんだけど(笑)、人間間のコミュニケーションや魔法のようなものが自分の音楽だと思っていて。言葉で表すとしたら、「サイケデリック・アート・ソウル」とか「サイケデリック・コズミック・ソウル」だね。とにかく「ソウル」がすごく重要だと思う。ソウルっていう単語はすごくよく使われているけれども、意外とみんなその大切さや意味を考えてないかもしれないんじゃないかな。ソウルがあることで自分や人を知ることができるし、人をリスペクトできるようになる。自分は音楽を自分のためだけではなく、他の人のために作っていて、それでコミュニケーションしたいっていう気持ちが一番根底にあるし、それがすごく音楽の持つ重要な意味だと思っているんだ。というのも、自分はすごく荒れていてなかなか人とコネクトできなかった時期があるので、それを踏まえて人と繋がっていきたいっていう気持ちを前面に出すような感じで、自分の音楽を作っているんだ。ひと言で言うと、「音楽はマジック」だと思ってるよ。

Rolling Stone Japan 編集部

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