アジカン後藤正文のフジロック談義2024 フェスの見どころ&注目アクトを語る

後藤正文、フジロック(Photo by 宇宙大使☆スター)

後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)がホストを務めるSpotifyのポッドキャスト番組『APPLE VINEGAR -Music+Talk-』では、つやちゃん、矢島由佳子、小熊俊哉(本誌編集)というレギュラー陣に、ときにはゲストも交えながら、ユニークな視点で音楽トピックや楽曲を紹介している。今年も同番組との連動企画で、2大洋楽フェスをテーマに音楽談義。注目すべき出演アーティストなどについて4人で語り合った。こちらはフジロック編。



後藤:1997年から始まったフジロックは今年で28年目。コロナ禍を経て、昨年は例年通りのフジロックが戻ってきた……という声も聞かれましたが、実際に参加してみた方はいかがでしたか?

小熊:まずは深夜のパーティー空間、THE PALACE OF WONDERの復活が印象的でしたね。個人的にも3日目の深夜に入り浸って、友人とライブを観ながらお酒を呑んでダベったりして。ビジネス的な観点だけで言えばなくても成立するけど、そういう場所を大事にしてきたからこそのフジロックだなと改めて思いました。

後藤:昨年、小熊くんと行ったグラストンバリーは、それこそTHE PALACE OF WONDERみたいな場所だらけなんだよね。フジロックはもともと、「グラストみたいなフェスをやりたい」という日高(正博)さんの想いからスタートしたわけで、ああいう場所はなくしちゃいけないんだろうな。最近は世界レベルでフェスが苦境の時期……曲がり角に来ているような印象があって。 ビッグなアーティストはフェスに出るより、自分たちで興行した方が儲かるわけで、みたいなね。ヘッドライナーのブッキングは欧米でも難しくなってきているという話も聞くし。

小熊:スマッシュも今は移行期を迎えていると思いますが、これまでのレガシーを受け継ぎつつ、フジロックの新しいあり方を示そうという志を強く感じます。もちろんフェスはこれからも必要だと思いますし、フジロックも「やっぱりフェスっていいよね」と思えるような場所であり続けてほしい。



後藤:ただビッグなアーティストを集めて騒ぐだけのお祭りじゃ、なんかちょっと切ないしね。グラストは会場のそこらへんで、いろんな国のいろんな人たちが勝手に演奏していたのもよかった。フジロックも若いインディーの子とかが楽器を持ち込んで、河原とかで演奏すればいいのに。俺もやろうかな……さすがに怒られるか(笑)。そういえば2012年の夜中に、(キャンプサイト近くの)ラコスバーガーの前で吉村(秀樹/bloodthirsty butchers)さんと歌ったんだけど、そのときは一応スマッシュに許可をとりましたね。

矢島:何時くらいにやられたんですか?

後藤:深夜12時ぐらいかな。吉村さんが苗場プリンスに戻る後輩を見つけては歌わせてました(笑)。「おっ、百々じゃねぇか」ってMO'SOME TONEBENDERの百々(和宏)さんを捕まえて歌わせたり、9mm Parabellum Bulletの菅原(卓郎)くんも歌わせられてたな。彼らの歌に吉村さんがギターを乗せていくんだけど、バカでかい音でギターソロとか弾くから、むしろ邪魔してるように聞こえるんだよね。あれは笑ったな。また誰かああいうことやってくれたらいいのに。

小熊:そういう自由さも受け入れてくれそうなムードを感じますよね。「自由」でいうと、SIRUPさんが去年のMCで「戦争・差別・インボイス反対」を掲げていたのもよかった。これもグラストで実感したことですが、各々が自由に楽しむためにも、政治の話は切り離せないわけで。フェスへの参加を通じて自分の生き方、社会のあり方を考えることも大切だなと再認識させられました。

矢島:私は去年、キャロライン・ポラチェックのライブにめっちゃ感動したことが思い出深いです。世界的に最先端のライブ・エンターテインメントを3日間ずっと観られるのはやっぱりすごく嬉しいですよね。

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