まずは、その音数の少なさに驚かされてしまうだろう。そしてそのわずかなサウンドを使って、ここまで魅惑的で、情感豊かなアルバムを作り上げてしまうことに誰もが舌を巻くに違いない。しかもまだメンバーは全員19歳という若さだ。今年初頭からイギリスのメディアが熱狂的に騒ぎ立ててきたのもよくわかる。その音楽性の基本は、ヒップホップやダブステップを独自に解釈したビートに、必要最低限の上モノを被せただけのシンプルなもの。しかし、そこに幼馴染みの男女ふたりが、気だるい調子で囁き合うようなヴォーカルを乗せることによって、どこまでも親密で、ダークで、メランコリックな世界が広がっていくのだ。ここには、ダブステップが綴る暗い物語に通じる何かがあり、若きロンドンっ子ならではの小憎らしいほどのスタイリッシュさもある。今のイギリスにおいては、肩を並べる者がないくらい強烈な個性だと言っていい。

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