ライドが明かす、「シューゲイザーの象徴」が歩んできた濃密な音楽遍歴

ライド(Photo by Kazumichi Kokei)

4月に代表作である『Nowhere』(1990年)、『Going Blank Again』(1992年)の再現ツアーで4年ぶりに来日を果たしたライド(RIDE)。チケットは見事ソールドアウト、東京ではオールタイム・ベスト的な選曲の追加公演も開催され、日本での根強い人気を再認識させられた。

UKシューゲイザー第一世代を象徴するバンドのひとつとして広く認知されるようになったライドだが、そのサウンドが一定だったことはなく、実際は作品をリリースするたびに大きな変化を重ねてきた。最初のEP2枚から『Nowhere』までの間にもアプローチの変化が感じられるし、『Going Blank Again』の一部やLP2枚組の大作となった『Carnival Of Light』(1994年)、一旦解散する前に残した『Tarantula』(1996年)では60s~70sロックの影響が顕著になり、フォーキーな曲、ガレージ・パンク、果てはブリティッシュ・ハード・ロック風までと、シューゲイザーのイメージから大きくはみ出す楽曲も増えていった。

再結成後の『Weather Diaries』(2017年)、『This Is Not A Safe Place』(2019年)では、改めて「ライドらしさ」を客観的に再考しながら、それを単になぞるのではなく、解散後に多種多様なジャンルに触れて表現の幅を増したメンバー各人の個性もしっかり反映。同窓会的なムードとは一線を画す現役感のあるアルバムを続けて作れたことが、現在まで好調さをキープできている大きな要因だろう。今回の来日公演では、すでにレコーディングが終わっているというニュー・アルバムから新曲「Monaco」も披露。前作ともタッチが異なる打ち込みを併用したポップなアレンジが新鮮で、まだまだ新しい展開を見せてくれそうな気配だ。

取材にはギター&ヴォーカルのアンディ・ベルと、ドラマーのロズことローレンス・コルバートが出席。実は変わり続けてきたバンドの軌跡を原点からたどり直すべく、各時代ごとにどんなものを愛聴していたのか振り返ってもらった。音楽マニアの友人同士が集まってスタートしたライドの基本的な性質も、わかりやすく伝わってくる内容だと思う。


アンディ・ベル(Photo by Kazumichi Kokei)


ローレンス・コルバート(Photo by Kazumichi Kokei)

─今日はふたりが今までどんな音楽に影響を受けてきたのか、順に聞かせてください。ますライド結成以前の10代半ばぐらいまでは、主にどんなバンドを好んで聴いていましたか?

ローレンス:僕の場合、まず思い出すのはハウリン・ウルフ、ジミー・リードといったブルースのレコードだね。一時かなり夢中で聴いて、ドラムやサウンドの響きがいいなと思っていた。その後エコー&ザ・バニーメンが好きになって……シンガーのイアン・マッカロック、ギタリストのウィル・サージェント、そしてドラマーのピート・デ・フレイタスにすっかり魅了されたよ。同時にヒップホップが台頭してきた時代でもあったので、エリック・B&ラキム、パブリック・エネミーのビーツに刺激を受けた。そしてアメリカから出てきたソニック・ユース、マッドハニー、ダイナソーJr.といったオルタナティヴ・バンド、UKではハウス・オブ・ラヴ、ストーン・ローゼズとか……そんなバンドが好きになっていった。ゴス系のバンドも好きで、結構聴いてたんだ。バウハウス、ザ・キュアーとか。

─ローレンスはストーン・ローゼズにかなりのめり込んでたそうですが。

ローレンス:うん、ファン度は多分僕よりアンディの方がずっと上だけど(笑)、確かにストーン・ローゼズが大好きだった。

─レニの独特なドラミングから影響されたところはありますか?

ローレンス:ドラムの叩き方はそれ以前に覚えたから原点ということはないけど、レニの叩き方、ストーン・ローゼズの音楽を実際に生で体験してしまったら……もう絶対に100%「これがやりたい」「こんな風になりたい」と思わざるを得ないものだったからね。影響は否定しようがないし、僕の中でトップ3に入るバンドだよ。

アンディ:レニの叩き方……(両手を大きく動かして真似する)最高だよね。他のバンドとは異なる種類のテクニックを持っていた。

ローレンス:あの流れるような動きも良かったんだよね。

アンディ:崇拝に値する個性と出会った感じがしたな……レニのパーソナリティがそのままダイレクトに、ドラムセットに直結してる感じでさ。

ローレンス:わかる、体から音楽が溢れ出てるみたいで……。



─レニの話だけで終わりそうな勢いですね(笑)。アンディはライドを組む前はどんなレコードを聴いてたんでしょう?

アンディ:ビートルズ、サイモン&ガーファンクルのレコードは父が家でよくかけていた。初期のビートルズ……『With The Beatles』『A Hard Day's Night』『Beatles For Sale』と、サイモン&ガーファンクルのアルバム『Bridge Over Troubled Water』がうちにあったんだ。そこから音楽を聴き始めて、もう少し成長するとザ・スミスやザ・キュアーを聴くようになった。そしてローレンスと知り合い、彼と同じようなレコードを聴いた。ストーン・ローゼズと、その前にジーザス&メリー・チェインが大好きになって……その2つは、僕らが知り合った頃に共通して好きだったよね。

ローレンス:そうそう。その頃はお互いのレコード・コレクションをシェアし合ってた。



アンディ:君がザ・フォールのカセットテープを作ってくれたのを覚えてるよ。「Cruiser's Creek」と「Smile」が入ってたでしょ?

ローレンス:そうそう(笑)。

アンディ:フォールのシングルは何枚か持ってたけど、まだアルバムに入ってる曲まで詳しく知らなかった。で、ベーシストのスティーヴ・ケラルトは当時レコード店で働いていて、彼はすべてを持っていた(笑)。僕らがスミスやメリー・チェイン、バニーメンを聴いている一方で、スティーヴはデッド・カン・ダンス、マイ・ブラッディ・ヴァレンタインとか、他にもオブスキュアなレコードを聴き漁ってたんだ。

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