さかいゆう4年越し野音ライブを総括 「春の嵐」も味方につける2部構成・3時間の熱演

Photo by Atsuki Iwasa

 
シンガーソングライターのさかいゆうが4月8日、東京・日比谷公園野外音楽堂にてワンマンライブ『SAKAI YU “LOVERS” CONCERT 2023 in YAON』を開催した。

2019年『さかいゆう 10th Anniversary Special Live “SAKAIのJYU”』を開催したのち、2020年、2021年と2回の中止を乗り越え、彼にとっては実に4年越しに実現した「野音」。この日は2部構成となっており、第1部ではサポートメンバーにMasa Shimizu(Gt)、菅野知明(Dr)、種子田健(Ba)を迎えて自身のオリジナル曲を披露した。そして途中に休憩を挟んで始まった第2部ではorigamiPRODUCTIONの面々をゲストに迎え、昨年11月にリリースしたカバーアルバム『CITY POP LOVERS』からの楽曲を中心に演奏するという、実にボリュームたっぷりの内容となった。

この日はあいにくの雨。夕方になってぐっと冷え込み、開演を待つ間も激しい風が容赦なく体温を奪っていく。定刻となり、サポートメンバーとともにステージに現れたさかいが、ふりしきる雨の中でレインコートを着込み待つオーディエンスに向かって開口一番、「すいません!」と挨拶すると、寒さで震えていた人々からようやく笑顔が漏れた。ステージの上に配置された楽器やアンプはすでにびしょ濡れで、鍵盤にたまった雨水を大きめのタオルでゴシゴシと拭きながら、それで放たれる音さえも「演奏」に変えていくさかいの姿に大きな歓声が湧き上がる。まずは2ndシングル『まなざし☆デイドリーム』でこの日のライブはスタート。続くデビューシングル「ストーリー」では、続く「ストーリー」(アルバム『Yes!!』収録)では、“僕らのストーリー”と歌うところを“野音のストーリー”と歌うなど、「野音仕様」の演出に喜びの声が上がった。


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雨は一向に止む気配がなく、ライブが始まって早くも数曲で楽器や機材のセッテイング位置を後ろにずらすなどのハプニングもあったが、その間に予定していなかった「サウナでのエピソードトーク」が始まったり、「雨上がらないかな……」と呟いたかと思いきや、“雨上がりの〜♪”と小田和正「たしかなこと」の一節を突然歌い出す一幕があったり、こんな天候だからこそのサプライズも随所に散りばめられた。

雨煙で白く煙ったステージがまさに曲名通りとなった「煙のLADY」を経て「リベルダーデのかたすみで」では、まるで『Inner Visions』期のスティーヴィー・ワンダーが降臨したかのような、ジャジーかつファンキーなエレピソロをエンディングで披露。降りしきる雨と強風が、その演奏をドラマティックに演出していたのも印象的だった。

「今日は皆さんの『声』を聞くのが目標なんで。雨対策はしっかり、マスクはご自由に。苦しかったら外してもいいですからね」


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予報では「18時には雨も上がる」とあったが一向に止む気配なし。気温も4月とは思えぬほど冷え込んできて、ともすれば心が折れそうになるオーディエンスに向かい、ねぎらいの言葉をかけるさかい。ここで本日最初のゲスト、シンガーソングライターのMichael Kanekoが登場し、二人で「Get It Together」をファンキーに歌い上げた。Michael Kanekoによるハードロック仕込みの速弾きギターと、さかいのエレピが熱いソロバトルを繰り広げると、一瞬弱まっていた雨が再び激しい風と共に呼び戻された。

第1部の後半は「嘘で愛して(Tell Me a Lie)」、「愛の出番」と、ピアノをフィーチャーした優しくも力強いバラード曲を続けて演奏。途中ピアノのインプロビゼーションでは、先日逝去した坂本龍一の「Merry Christmas Mr. Lawrence」を思わせるフレーズを差し込むなど、彼への追悼の意を「音楽」で表現するさかい。一瞬空を仰ぎ、両手の人差し指を力強く天に向けていた姿が印象的だった。

続く「君と僕の挽歌」で、“淋しさは続くだろう この先も/思い出 増えない/でも輝いてる”“別れの瞬間も なぜだろう?/悲しみよりも 「ありがとう」がこみ上げてきたよ”と歌う歌詞も、まるで教授への弔辞のように感じられる。“優しい苦笑いを 思い出す”という一節すら教授のことを歌っているように感じてしまい、ついついしんみりしていると、「終わると見せかけてー!」とさかいの陽気な叫び声が。第1部の最後は「さかい流ゴスペル」とも言うべき「薔薇とローズ」を力強く歌い上げた。

 
 
 
 

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