Nissyがドームで届けたポップスターの「親密さ」と新たなコミュニケーション

Nissy Entertainment 4th LIVE 〜DOME TOUR〜at TOKYO DOME 2023.2.17(Photo by 田中聖太郎写真事務所)

「本当に今までにないくらい先が見えない状態で作っているというか。じゃあ、いつか会えるかもしれないし、いつかのために準備をする」。Nissyがそう語ったのは、2020年8月のことだった。歴史に名を遺すであろうパンデミックは、エンターテインメントと愚直に向き合ってきた彼にも影を落とし、結果的に4年半ぶりとなる3rdアルバム『HOCUS POCUS 3』にも大きな影響を与えた。「求められていることに応えるのがエンターテイメントのひとつ」という確固たる信念を持ち、自分自身の感情をそのまま作品へ流しこむことをあまりしてこなかったNissy。しかしながら今作は、彼のなかで渦巻くネガティブな感情をエンターテインメントに昇華すると共に、「10年後にこういうことがあったと思い出されるものにしたい」という願いまで内包した1枚に仕上がったのである。

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そんな『HOCUS POCUS 3』を引っ提げて始まった、6大ドームをまわる『Nissy Entertainment 4th LIVE〜DOME TOUR〜』なだけに、例年とは一味違う空気を放っていたように思える。ライブ全体がこだわり抜いたエンターテインメントとして成立していたことはもちろん、何が正解かわからない現実のなかで「自分たちは一歩踏み出した」と意志を示し、最先端の技術をふんだんに取り入れた演出で堂々と未来を照らしてみせたのだ。

本稿では、2月17日に開催された東京ドーム公演、Day2の様子をお届けする。

約3年半ぶりのライブということもあり、会場にはワクワクとした空気が開演前から立ちこめていた。ツアー開始当初は制限されていた声出しも、2月4日の京セラドーム大阪公演以降はマスクを着けていれば全面解禁。コミュニケーション手段はカスタネットから声援へ戻り、客入り時にはAIのTHREEがオーディエンスとコール&レスポンスを繰り広げる。照明が消え、観客席が紅く染まると、次第にNissy Entertainmentへと誘われていった。

Nissyが指をパチッと鳴らし、「DoDo」からライブはスタート。“そろそろ海に 会いに行こうか”と歌うナンバーをオープニングに配置し、光の海に姿を現すのだから全くもって粋なエンターテイナーである。例年であれば、派手なファーのアウターやセットアップのスーツで幕開けを飾るものの、今回はなんと白いプルオーバーにスラックスといったリラックススタイル。一味違うスタイリングは、ワンマイルウェアが流行った特殊な状況下を想起させ、変わってしまった日常が少しずつ再生されていく起点の役目も果たしていた。

Lippyの時計が合図を送り、「Trippin」により本格的にNissy Entertainmentへ突入。華やかな火花も上がり、一切出し惜しみしないエンタメ空間をド頭から作りあげていく。ギターを弾く振り付けのシーンでは、XR技術を用いてアニメーションをリアルタイムに合成しMVを再現してみせた。挑発的な視線を投げかける「The Ride」、“hello hello”の声が会場に響く「Never Stop」と休む間もなくパフォーマンスを展開。「Relax & Chill」ではカメラ目線で一人ひとりへ言葉を届けた。たくさんの会えない日々を越えて、ようやくこの日に辿り着いたことを一節の重さが色濃く物語る。再び手にした夢の時間をもう手放すまいという祈りを「Jealous」の“離れないで”に乗せ、一つ目のセクションでNissy Entertainmentの再生を謳ったのだった。


Photo by 田中聖太郎写真事務所

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