菊地成孔と湯山玲子が語る、クラシックをイヤホンで聴くことと「踊る」ことの変容

左から菊地成孔、湯山玲子

2023年3月7日(火)、代官山T-SITEで開催された完全ワイヤレスイヤホンのフラッグシップモデル「JBL TOUR PRO 2」のローンチパーティーにて、ジャズミュージシャン・菊地成孔と著述家・湯山玲子によるスペシャルトークセッションが行われた。

本パーティーでは、ハーマンインターナショナル株式会社が2023年3月10日(金)に発売した新商品「JBL TOUR PRO2」についてのプレゼンテーションが行われ、製品が持つ「完成された装着感と、新次元の絶対音質」というコンセプトや様々な革新的機能が発表された。

【画像】菊地成孔と湯山玲子のトークセッション

プレゼンが終了し、スペシャルゲストとして菊地成孔と湯山玲子の2人が迎えられた。リラックスした雰囲気の中、音楽、イヤホン/ヘッドホン、その効能など、TOUR PRO 2を取り上げつつ、幅広く自由なテーマでトークを展開していった。


左から菊地成孔、湯山玲子

湯山:JBLの音は中域がすごく豊かで好きですね。音のバランスが良くて、中音が重要なクラシックにも対応していると思います。

菊地:オーディオとしてのJBLが持つ機能性、音質をイヤホンでも継承していると感じます。

湯山:私たちが高校生、大学生の頃、ちょうどスティーリー・ダンが出てきたぐらいの時代、スタジオ録音の音質に注目が集まったじゃないですか。フュージョン、ジャズみたいな16ビート系のおしゃれな音楽が流行って、ジャズ喫茶なんかも様変わりして。そうした時代の中で、JBLのオーディオが世の中にものすごくインプットされていったと思うんですよね。

菊地:JBLはイヤホンより前のオーディオの段階から他のメーカーに先立って、クラブ、レゲエ、ジャズなどに合わせたイコライジング機能を意欲的に取り入れたメーカーですよね。レゲエだったらボトムを膨らませる、ロックだったらギターが聴こえるように中域を上げるだったり、ジャンルごとに音の設定がある中で、一番難しいのがクラシックなんですよ。


JBL TOUR PRO 2(ブラック)

湯山:クラッシックのオケには、様々な楽器が揃っていて中にはチェレスタのように小さな音もあって。特にワーグナーやショスタコーヴィチなど、大規模な編成になると、生で聴かなければ聴き分けられないような音があるんですよね。私が最近、大注目しているクルレンツィスっていう指揮者がいるんですけど、彼の指揮するマーラーの交響曲6番が断トツで好きなんですよね。古典的なクラシックの音響ってあるんだけど、私たちの耳ってもうフルトヴェングラーの時代とは違っていて、現代の耳になっている。クルレンツィスは自身が率いるオケを通じて、現代のクラシックの音響はどうあるべきかに取り組んでいるような人なんですよ。TOUR PRO 2では、ピチカートがぴったりと揃って的に向かって飛ぶような表現がしっかりと感じ取れました。

菊地:クラシックと同様にクラブカルチャーにも接している湯山さんとしたい話でいくと、今までの時代、人々が「踊る」ってなったらクラブやディスコに行って大きいPAの前で踊っていましたけど、これから先踊っても耳から落ちないようなイヤホンが出てきて、それをつけて「踊る」ような時代が来てもおかしくないと思います。コロナ禍以降、ライブハウスに来ても踊れない体になっちゃっている人が多いんですよ。要するに僕らは爆音の中「踊る」っていう体質は死ぬまで変わらない中で、若い人たちはその内圧、衝動を外に出せない。そうなった人たちのダンスは変わってくるだろうし、クラブカルチャーも変わってくると思います。あとは、イヤホンでクラシックを聴きながら街を歩く人が出てくるような時代になれば面白いですよね。ジャズ、R&B、ヒップホップはもうすでにイヤホンのサイズに収まるようになったので、次はクラシックですね。

Rolling Stone Japan 編集部

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