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『卵』の影響元「オリジナリティは信用していない」

―『卵』の音楽的な影響元についても聞かせてください。

柳瀬:サウンド面でいえば、バディ・リッチ「Nutville」と、さっきも話に出た小椋佳「思い込み」を混ぜた感じです。空間的な音の作り方が2作とも共通していたので。最近聴いたなかでもバディ・リッチのアルバム(1973年作『The Roar of '74』)は音がカッコよくて、こういう音像にしたいって思いましたね。




―「壁」みたいに、今までよりジャズを感じる曲が増えた気がします。

柳瀬:演奏的にできるようになった、といってもフェイクジャズなんですけど。ずっと速い曲がやりたかったので。それこそ「壁」は「Nutville」をかなり参考にしました。いつも1曲ごとの参考が10曲くらいあるんですけど……。

―10曲も!? 

柳瀬:詩を書くときや骨組みを作るときは(他の曲から)そんなに影響を受けないけど、そこからどういうふうに聴かせようって考える段階で、10曲くらいオールジャンルで曲を挙げて、混ぜ混ぜしていくような作り方をしていて。「壁」はバディ・リッチのほかに、町田町蔵が「アースビート伝説'85」に出演したときの「ボリス・ヴィアンの憤り」とかを意識しましたね。当初はポエトリーにするつもりだったんですけど、今の自分には無理でした。



―今回の『卵』もそうだし、アルバムが出るたびに参考曲のプレイリストを公開していますよね。

柳瀬:プレイリストを作りながら曲を作っているわけじゃないので、いつも忘れちゃうんですよ。覚えている曲だけあとから書き出して。



―すぐに納得できる曲もあれば、意外な曲もあって。RIP SLYMEの「熱帯夜」は?

柳瀬:あれは「イカと蛸のサンバ」ですね。陽気なテンションというかエロ要素で。あの曲は僕のなかの妄想で、RIP SLYMEとRIZEを勝手に掛け合わせた感じ。実をいうと、曲を作っているときはうろ覚えで、全部終わってから久しぶりに聴きました。「たしかこんな感じだったよな、灼熱でビキニ美女がいて、サンパウロっぽくて……」みたいな(笑)。

―(笑)ブラジルといえば、ジョルジ・ベンの曲も入っています。

柳瀬:あの曲、構成がヤバいですよね。ジョルジ・ベンやガル・コスタとか、暗いブラジル音楽はアルバム全体に影響を与えています。あと「イカと蛸のサンバ」に関しては、メキシコのイメージが強くて。『スーサイド・スクワッド』にエル・ディアブロっていう炎を操るミュータントが出てきて、家族と喧嘩になったとき体が燃えて、奥さんや子供を間違って殺してしまうくだりがあるんですけど、「それやりてえ」って。




―いろいろ幅広い(笑)。

柳瀬:そういう影響元はいっぱいありますね。僕は元ネタがないと絶対に嫌なんですよ。オリジナリティとか個性といわれるものを信用していない。それこそ他の若いミュージシャンはみんな賢くて、昨日聴いたものを瞬時にアウトプットできたりするけど、薄く感じる部分もあって。うわべだけをオシャレに切り取っているというか。「ちゃんと元ネタを掘り下げて、歴史を勉強しなさい」と言いたくなるときもあります。

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