オカダ・カズチカが語る、サッカーW杯・格闘技の熱狂、2023年の新日本プロレス

オカダ・カズチカ(Photo by Mitsuru Nishimura)

新日本プロレスにとって、いや、日本のプロレス界において年間最大のビッグマッチである1.4東京ドーム大会「WRESTLE KINGDOM 17 in 東京ドーム」がいよいよ間近に迫ってきた。今大会は2022年10月1日に死去した新日本プロレスの創設者であるアントニオ猪木の追悼大会として開催され、そのメインイベントを務めるのはIWGP世界ヘビー級選手権試合、オカダ・カズチカ VS ジェイ・ホワイトである。

【写真を見る】オカダ・カズチカ 撮り下ろしポートレート

創立50周年を迎えた2022年の新日本プロレスにおいて、オカダは常にリングの中心に立ちながら激闘を繰り広げ、団体を牽引。東京スポーツ新聞社選定「2022年度プロレス大賞」では通算5回目となるMVPと3年ぶり4度目となる年間ベストバウト(VSウィル・オスプレイ戦)を受賞した。新日本プロレスの50周年とアントニオ猪木の訃報を経て、オカダ・カズチカは今何を思い、見つめながらイッテンヨン東京ドームのメインに立つのか。その胸中に迫った。



―プロレス大賞MVPとベストバウトおめでとうございます。率直な手応えとしてはいかがですか?

MVPに関してはこれで5回目の受賞になるので、特別感はあまりないですが嬉しいです。東スポの方にも言われたんですが、喜び方もだんだん薄くなっているようで(笑)。

―(笑)。自分が獲って当然という気持ちもある?

確かに2022年は特に「僕がMVPじゃなければ他に誰も獲れないでしょう」という思いがありましたから。もちろん嬉しさはありますけど、自信があった分、「やった、獲ったぜ!」という感じではないんです。ライバルがたくさんいれば嬉しさは倍増していたと思いますけど、2022年はそんなことなかったかなと思います。

―ただ、新日本プロレスの創立50周年というメモリアルイヤーにプロレス界の顔として1年を終えたという矜持はあるのかなと。

そこはそうですね。新日本プロレスの50周年をしっかりと盛り上げてこられたんだなと思います。そこを評価していただいてのMVPだとも思いますし、猪木さんにもいい報告になるんじゃないかなと思いますね。

―あらためて、オカダさんにとって、そして新日本プロレスにとってどのような1年だったという体感がありますか?

2022年は特に新日本プロレスの偉大さを肌で感じる1年でした。たくさんのOBの方たちに参戦していただき、ここまで選手が集まる団体のすごさを感じました。50周年という節目のタイミングで中心選手として戦えたのも嬉しかった。ただ皆さんの存在が大きくて、「本当に僕がチャンピオンなのかな?」と思うこともあったりして(笑)。でもこれが50周年の醍醐味かなって。

―オカダ・カズチカは常に中心にいなければならないというプレッシャーを自分に課してるところはないですか?

いや、プレッシャーは感じてないですね。プロレスに関しては何をやっても正解に辿り着く自信がありますから。

―曇りなく断言できるのが素晴らしい。

僕が新日本プロレスに入門したときはいわゆる低迷期でした。当時はプロレスリング・ノアの勢いもすごかったですし、全日本プロレスは武藤(敬司)さんを中心に外国人選手も多く参戦して盛り上がっていた。そのなかで新日本プロレスを俺が変えてやるんだという気持ちは強くありました。

―アメリカ遠征からレインメーカーとして凱旋帰国したのが2012年のイッテンヨン東京ドームでした。以降、オカダさんがここまで揺るがない矜持を持てているその要因はどこにあるのでしょうか?

やっぱり経験が大きいと思います。ただ、プロレス以外の現場だと緊張しますよ(笑)。TVに出演したり、人前で話してくださいと言われたら「えー」と思ってしまう。でもリング上にいれば、本当にいろんなことを経験したので。むしろリング上で経験してないことはないと思うくらい。

―パブリックイメージとしては順風満帆な道のりを歩んでいると思われている部分もあると思いますが、決してそんなことはないですよね。たとえば2017年、柴田勝頼選手がオカダさんとの激闘の果てに大ケガを負ってしまったことは今も重く受け止めていると思いますし、あの試合はプロレスの厳しさ、怖さを観客にもダイレクトに伝えるものでもあったと思います。

そうですね。振り返れば、正直、「なんで僕にここまで試練を与えられるんだろう?」と思ったこともあるんですが、それ以上にいろんな場面で厳しさや感動も含めてプロレスというものの本質を体感させてもらっていると思います。

―今のオカダさんは、それこそ猪木さんがそうであったようにいかに世間にプロレスのすごみを届けられるかという視点に立っているとも思います。2022年はサッカーW杯の盛り上がりも悔しい思いで見ていたのではないかと想像します。

悔しくなる部分はありますよね。W杯もすごいと思いましたし、「THE MATCH」での那須川天心選手VS武尊選手もすごいなと思いました。そう思うと今のプロレスってにわかファンが少ないように思えるんです。僕はそこが大事なような気がしていて。盛り上がっているから観てみよう、行ってみようという人たちを今後増やしていけるように話題提供をしていきたいなと思っていますね。

―そのためには何が必要だと思いますか?

W杯や「THE MATCH」を観て、その場所にいるということが重要だなと思ったんです。観客が「あの場所にいたんだよ」と自慢したくなる気持ちというか。だからこそ、プロレスもそういった価値のある戦いを見せていかないといけない。観ていて楽しいのはもちろんですが、そこにプラスαで価値を付加していくことが今後の肝になってくるのかなと思いますね。もちろんリング上で魅せることを一番大事にしていますけど、今はそれだけではダメだとも思っていて。正直、真壁(刀義)さんや棚橋(弘至)さんがTVに出始めた当初は、彼らにTVは任せて僕はリング上での戦いに集中すればいいと思っていました。でも、自分自身もいろいろな番組に出て存在を知ってもらった上でプロレスをしないとダメだという考えに変わったんです。


Photo by Mitsuru Nishimura

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

MOST VIEWED人気の記事

Current ISSUE