ヘイルストームが語る、希望の道筋「ツアーこそが自分のいるべき場所」

ヘイルストーム(Photo by Jason Stoltzfus)

現代アメリカのハード&ヘヴィ・ロック界を代表するバンドとなったヘイルストームが2023年2月、来日公演を行う。

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彼らの最新アルバム『Back From The Dead / バック・フロム・ザ・デッド』は闇の中で希望とポジティブな光を見出す作品だ。コロナ禍の始まる3カ月前から曲作りを始め、一時はボーカリスト、リジー・ヘイルが精神的に“暗い場所にいる”と報じられたが、無事アルバムは完成。攻撃的なシャウトからバラードの歌いっぷりまで限りなくエモーショナルで説得力のある彼女のヴォーカルは、生命力がみなぎるパワフルなものだ。

既にツアーを再開。アメリカ、ヨーロッパ、大洋州を回って満を持して日本に戻ってくるヘイルストームのリジー、そしてギタリストのジョー・ホッティンジャーがジャパン・ツアーに向けての抱負、そして12月16日にリリースされた『Back From The Dead』デラックス盤について語った。

ー現在バンドはどんな状態ですか?

リジー:すべてに対してポジティブで順調よ。ツアーはどこでもすごい盛り上がりだし、日本でプレイするのを楽しみにしている。

ジョー:東京のショーはこれまで日本でやった単独公演としては最大規模のものになるし、その逆に大阪では久しぶりにお客さんとの距離が近い、親密なクラブ・ギグなんだ。フェスからクラブまで、いろいろ異なった会場でプレイすることで刺激を受けるんだよ。



ーアルバム制作当時と今では、音楽に対して異なった視点を持っていますか?

リジー:私たちの曲はその時々の自分たちを捉えたスナップショットだし、今ではまた異なった地点にいるわ。『Back From The Dead』は私たちのサバイバル宣言だった。新型コロナウイルスで世界が静止して、私たちはそれぞれの個人的な問題を抱えていた。でも私たちは生きていて、前に進んでいく。そんな意思表示だったのよ。それと同時に、ありのままの自分を肯定する作品でもあった。誰だって落ち込むときはある。でも、いつか気分が良くなるときも訪れるし、必要以上に頑張る必要はないのよ。

ジョー:俺たちにとって曲を書いたり、ステージで演奏してお客さんとエネルギーを与え合うことは、人生そのものだったんだ。コロナ禍でそれを奪われたことはショックだったし、いつになったら日常が戻ってくるか先行きが見えてこないことで不安を感じた。そんなとき、バンドの絆を再確認出来たし、SNSで世界中のファンからメッセージをもらったことが励みになった。彼らの住む町ひとつひとつを訪れて、感謝を込めたライブをやるつもりだよ。“外国人”になるのが好きなんだ。新しい人々や文化に触れることはいつだってエキサイティングだよ。

ーヘイルストームはヘヴィなサウンドにリジーのパワフルなボーカルが乗って“無敵感”を放っていますが、自分の弱い・脆い面を表に出すことに躊躇はありませんでしたか?

リジー:まったくなかった。結果として、自分の弱い部分をさらけ出したことは正解だったと思う。たくさんのファンとエモーショナルな面で繋がることが出来たし 、私たちの音楽を聴いて自分が1人ではないことに気付いてくれたファンもいた。「Raise Your Horns」や「Bombshell」の歌詞をタトゥーで彫って、「この一節は自分が考えていたことを集約している」と見せてきたファンもいた。ステージに上がっているからといって、私は特別な存在ではない。みんなと同じように喜んだり悲しんだり悩んだりするのよ。その一方で、私たちは1人1人がそれぞれ違っている。だからお互いの相違点を受け入れて、許容するべきね。





ジョー:人生は短いからね。周囲を気にして黙り込んでしまうのではなく、自分の意見を主張するべきなんだ。ヴァン・ヘイレンも言っているだろ?「とにかくジャンプしろ」って(笑)。

ー精神的に落ち込んでいるとき、リジーはプロフェッショナルな専門家に診てもらいましたか?

リジー:私は13歳のときから歌ってきたし、ステージ上のペルソナやレザー・ジャケットが自分のヨロイだった。パンデミックになって、それが剥ぎ取られたことで、寄りかかれるものがなくなって混乱したわ。それでセラピストに相談した。彼女は私と同じように苦しんでいる人を大勢診てきたし、 自分の悩みや心配事に接する新しい方法のアドバイスをしてくれて、助けになった。私が自分の経験から言えるのは、1人で抱え込まずに誰かに相談することよ。家族でも友達でもいい。彼らに言うのが難しかったら、プロに話してみることは良い選択だと思う。

ジョー:ロックダウンから最初の1、2カ月は家で曲を書いたりジャムをやったりしたけど、先行きが見えなくてさすがに不安になったね。俺たちに出来ることは再始動に向けて備えることだけだった。行くところがなくてもレザー・ジャケットを着て、香水を付けてね(笑)。

リジー:結果として、ツアーに戻ることが出来たのが一番の救済となった。ここが自分のいるべき場所だと実感したわ。


リジー・ヘイル(Vo)(Photo by Jason Stoltzfus)

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