斉藤壮馬が語る、アーティスト活動で得た「感覚的アプローチ」

― 今回のEPも斉藤さんの音楽愛が大いに感じられる作品ですが、インスピレーションのもとになったアーティストや楽曲はあったのでしょうか?

斉藤:一応全曲アレンジのリファレンスは出したんですが、今回結構バラバラでしたね。でも今振り返ると、中学生ぐらいの時によく聴いていたアーティストさんを挙げたことが多いですね。

―「SPACE TRIP」は個人的にはザ・スミスが浮かびました。

斉藤:今でもスミスは好きなんですが、それこそ中学の時めちゃくちゃ聴いていました。大学の入学直後に書いたプロフィールシートに好きなアーティストを書く欄があって、「スミスとエリオット・スミス」って書きました(笑)。今言っていただくまで気づいてなかったんですが、やっぱり音楽にハマった10代半ばに好きだった曲の影響が大きいんですかね。デモを作る時にわかりやすい仮タイトルを毎回付けるんですが、「蝿の王」は「ブロパ」でした(笑)。中学生の時に聴いたBloc Partyの「Helicopter」がすごくかっこよくて、こういうツインギターのリフを自分でも作れないだろうかと思ったら雛形が生まれていて。でも当時は今のように作曲ができなくて、それで10数年経ってようやく形にできました。僕は最初に買った洋楽のアルバムがROOSTERのアルバムだったんですが、割とスタジアムロック系で。その次に買ったのがThe Departureっていうポストパンク系でどんどんそういうサウンドが好きになっていったってところもあるので、良い意味でエディットされきってないような音像もやってみたいです。今回の「蝿の王」はそういうアレンジをしてもらったんですが、例えば、もっとリバティーンズみたいな音像もやってみたいなと。僕の楽曲制作のやり方としては、自分が好きな音楽を素直に咀嚼して、自分のフィルターを通して表現ができればいいなと思っているので、ロックに限らずいろんな音楽を楽しみながらこれからも作っていけたらいいなと思いますね。

―その感じが今回すごく出てますよね。

斉藤:確かに今回は一番素直かもしれないです。そういう意味で言うと、隠しトラックが一番面白いかもしれません(笑)。仮タイトルが「アシッドフォーク」で、もうちょっと暗くサイケな感じにしようと思ったんですけど、アレンジャーのSakuさんがデモを聞いて、「今週末ちょっと時間あるからアレンジしてみていい?」って言ってくださって。最後の妙にクイーンみたいになるところは僕的にはMIKAのイメージなんですが、Sakuさんが戻してくださったファーストアレンジはその前で終わってて、「あれ? 僕最後まで入れてませんでしたっけ?」って訊いたら、「いや、あそこから先はちょっと怖くて触れてない(笑)」「展開が独特過ぎて分からない」みたいなことをおっしゃってて(笑)。最後急にグラムロックみたいになるところで、僕らもトラックダウンをしながらめちゃくちゃ笑っちゃって。みんなで「なんだこの曲!」みたいな。別に茶化しているわけではなくて、音楽って時にそういう壮大なバカバカしさがすごく魅力的だったりしますよね。だから、結構遊びがあるEPかもしれないですね。そういう遊びやユーモアを楽しんでいただけましたら幸いです。

―(笑)では、最後に2022年の斉藤壮馬的ベストソングを教えていただけないでしょうか。

斉藤:あんまり今年の、という括りで音楽を聴かないんですけど、思いついたのは宇多田ヒカルさんの「君に夢中」でしょうか。宇多田さんは、ソングライターとしてもシンガーとしても本当に大好きなのですが、最新アルバム『BADモード』も非常に素敵でした。山下達郎さんの『Softly』も印象的でしたね。あとは最近ピクシーズのライブに行ったので、そのあたりのオルタナバンドばかり聴いています。『メロンコリーそして終わりのない悲しみ』が大好きなんです。次作『Atum』も楽しみです。



<リリース情報>

斉藤壮馬
3rd EP『陰/陽』
発売日:2022年12月7日(水)

初回生産限定盤(CD+PHOTOBOOK)
品番:VVCL2163~4
価格:3850円(税込)

通常盤(CD)
品番VVCL2165 
価格:2420円(税込)

=収録曲=
1. 楽園
2. SPACE TRIP
3. エニグマ・ゲーム
4. 風花
5. 蝿の王
6. mirrors

Rolling Stone Japan編集部

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