斉藤壮馬が語る、アーティスト活動で得た「感覚的アプローチ」

斉藤壮馬

2022年6月7日にアーティストデビュー5周年を迎えた斉藤壮馬。声優として第一線で活動しながらも、自身で作詞作曲を手がけた音楽的探究心に溢れた楽曲をコンスタントに発表し続ける姿勢は、非常にバイタリティが溢れる。3rd EP『陰/陽』はそれぞれバラバラのアプローチの楽曲が収録されたエンターテインメント色とフィクション性の強い作品だ。「これまでで一番伸び伸びと作ったかもしれない」と斉藤自身が位置付ける今作について、そして、最近の音楽モードについても訊いた。

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―3枚目のEP『陰/陽』はタイトル通り陰と陽がテーマとなっています。このテーマで作品を作ろうと思ったのはどうしてだったんですか?

斉藤:どの盤もそうなんですが、先にコンセプトを決め込んで制作を始めるというより、楽曲の素材がいくつか生まれてきた時点で、なんとなくテーマが見えてくる感じなんです。まず、これまでのEPとアルバムのタイトルはすべてアルファベット表記だったので、そうではないタイトルにしたいという想いがありました。それで、楽曲の制作を進めていた時に、たまたま複数のコンテンツや書籍で、陰陽道や太極図に関連する記述に立て続けに出会って、陰と陽というテーマは面白いかもしれないという発想が生まれました。太極図で描かれている陰と陽って、陰が暗くて陽が明るいということとも違って、すべての物事には陰と陽の側面があって、それが循環していくことでエネルギーの質が良いものに保たれているという真理のようなものがあるんです。今年2月にリリースした2nd EPの『my beautiful valentine』を作った時も、矛盾を楽しむ、諧謔精神を愛するみたいな考え方が自分の中にあったんですが、今回はよりその傾向が強まっている感じがします。

―今回の収録曲は最近作った曲が多いんですか?

斉藤:そうですね。デモというか、ワンコーラスが最初からあったのは「エニグマ・ゲーム」。その次に古いのが「楽園」で、他の楽曲は2nd EP以降に制作を進めました。

―「エニグマ・ゲーム」はイントロのドラムンベースっぽいビートからしてかなり新鮮で。そこから一気に華やかなストリングスと厚みのあるコーラスが入る派手な曲ですが、デモの段階からこういうイメージがあったんですか?

斉藤:ディスコファンク調のアレンジになっていますが、デモはもう少しスタンダードなロックサウンドでしたね。今回のEPは複数の方にアレンジをお願いしたいと思って、そうすることによって陰と陽の多面性が表現できると思ったんです。それで16ビートでリズムが強い楽曲が1曲欲しいと思って。「エニグマ・ゲーム」のアレンジを担当していただいた清水哲平さんは、以前「レミング、愛、オベリスク」という楽曲でもお世話になり、「清水さんの洋楽っぽいグルーヴ感がすごく好きだな」と思っていたので今回もお願いしました。最初から「ストリングスをこういうふうに入れてください」というようなディレクションはしていたんですが、冒頭のそのドラムンベースっぽい感じやAメロBメロのベースのリフは清水さんが提案してくださったので、すごくいい楽曲になりました。この曲は90分くらいのクライムコメディみたいなエンターテイメント映画かドラマの主題歌のようなイメージがあったので、コーラスもたくさん積んでゴージャスなイメージで作りました。

―今回のEPは全曲バラバラの方向性で、エンタメ色がとても強いと感じたんですが、この曲は特にエンタメ色が強いなと。

斉藤:そうですね。楽曲が揃ってきた時に、どの曲もリードっぽい感じがあったので、曲順を決めるのがすごく大変でした。1曲目の「楽園」からラストの「mirrors」まで、陽の雰囲気から始まって、陰の雰囲気にグラデーションしていくイメージでしたね。

Rolling Stone Japan編集部

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