2CELLOS最後の日本公演、愛すべき2人の魅力に満ちたラストステージ

2CELLOS(Photo by Yuki Kuroyanagi)

 
2CELLOSが11月21日に大阪・丸善インテックアリーナ大阪、11月22日に東京・日本武道館にて、最後の来日公演を開催。武道館公演の模様を、荒野政寿(シンコーミュージック)がレポート。

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これが2CELLOSにとって、日本で最後のコンサート──あらかじめそう銘打たれていたこの日の日本武道館公演は、やはり開場前から独特なムードに包まれていた。10年前の2012年、最初のジャパン・ツアーから毎回彼らのステージを観てきたが、あのように静かな熱気が場内を浸す光景は初めて見た気がする。卒業式の前にも似た緊張感、と言ったらわかりやすいだろうか。

武道館のような大会場を何度も埋められるグループになったのに、どうして活動を止める必要があるのか……割り切れない気分で場内を見渡しながら、最近のインタビューでの発言を思い返してみる。クラシックからラテンにまで視野を拡げ、プレイヤーとしてのさらなる飛躍を模索しているステファン・ハウザー。コンポーザーとしての可能性を本格的に追求し始めたルカ・スーリッチ。キャリアを重ね、それぞれの道に歩み出したふたりにとって、2CELLOSというフォーマットは、もはや窮屈すぎる。今でも友人──これまで以上に仲がいいとすら言っているが、ミュージシャンとして進化した結果の「ひと段落」はごく自然な流れでやって来たもの。性格もキャラも違うが、共通して生真面目なところがあるふたりだから、この「流れ」に逆らうという選択肢を選ぶわけがなかった。


Photo by Yuki Kuroyanagi

Photo by Yuki Kuroyanagi

あれこれ思い出しつつ開演を待っているうちに感傷的な気分になった19 : 05、暗転してショーがスタート。カール・ジェンキンス作、「ベネディクトゥス」の繊細な主旋律をステファンからルカへ受け渡し、丁寧に進行していく。凝り固まった心をゆっくり解きほぐすようなスタートだ。

その空気が、シームレスに続いた2曲目、「ウェア・ザ・ストリーツ・ハヴ・ノー・ネーム」でガラッと変わる。U2の言わずと知れた名曲。ジ・エッジがディレイを用いて組み立てた独創的なギター・リフをチェロで刻みながら、ステファンがリズムに合わせてヒョコヒョコと首を動かし始めた。“いつものひょうきん野郎のままじゃん!”と、ここでホッと一安心。

MCで4年も日本のファンを待たせたことを詫びたステファンは、「年をとったから、もう速く弾けないよ!」と笑わせる。何回も日本に来ているのに日本語がさっぱり上達しておらず、コンバンワとアリガトウぐらいしか言葉が出てこない点も、変に手練れた感じにならない彼らしくていい。お馴染みの愛すべき2CELLOSが、間違いなく目の前にいる。

エド・シーランの「キャッスル・オン・ザ・ヒル」では、ステファンが原曲のフォーキーな曲調を踏まえて、指でコードをかき鳴らす。こういうちょっとした工夫に、オリジナルへのリスペクトが滲むのだ。続くミューズの「レジスタンス」ではルカも加熱してきてアタックが強さを増し、弓がみるみるほつれていく。そしてステファンが「次は……僕の好きな曲!」と前置きしてから、再びU2の「ウィズ・オア・ウィズアウト・ユー」へ。異なるジェネレーションのロック名曲を次々と、叙情味豊かに料理していく。

マイケル・ジャクソンの2曲、「ヒューマン・ネイチャー」「スムーズ・クリミナル」では、静/動のコントラストを鮮やかに描く。いずれもステファンがコーラスで歌うよう促し、オーディエンスを巻き込んで楽しませる技が相変わらずうまい。その間も指を使ってリズムをさまざまに出し続け、チェロの常識を超えたプレイをたっぷり見せつける。煽情的なリフで押しまくる「スムーズ・クリミナル」では、たまらず客席から立ち上がる人が続出した。

 
 
 
 

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