ゲスの極み乙女、NFTアート販売の真意とは? 川谷絵音ら登壇トークイベントをレポ

左から岩瀬大輔(KLKTN CEO)、川谷絵音(ゲスの極み乙女)、増井健仁(ワーナーミュージックジャパン)

 
NFTを通してアーティストとファンを結ぶグローバルなプラットフォーム「Kollektion」を提供するKLKTNとゲスの極み乙女が、NFT作品「Maru」を利用したプロジェクトを実施。このプロジェクトについて、ゲスの極み乙女の川谷絵音、ワーナーミュージックジャパンの増井健仁、KLKTN CEOの岩瀬大輔によるトークセッションが10月19日に下北沢B&Bで開催され、オンラインでも配信された。当日のレポートと、イベント終了後に行った川谷へのインタビューをお届けする。

NFT作品「Maru」とは、今年結成10周年を迎えた「ゲスの極み乙女。」が「ゲスの極み乙女」に改名することによって取れた「。」を様々なデザインに進化させ、本プロジェクトのために書き下ろされた楽曲「Gut Feeling」のステム音源を聴くことができるという、それぞれが一点ものの音楽×NFTアート作品。7月1日に販売を開始し、すでに国内外のファンに購入されている。

さらには、「Maru」のユニークなアート作品がカバーに印刷された「Gut Feeling」のアナログレコードを新たに制作。「Maru」のホルダーは、保有するNFTをバーン(Burn=燃やす)して消失させることを条件に、世界で唯一のデザインを持つレコードを入手することができる。この試みはイギリスを代表する現代作家であるダミアン・ハーストによる社会実験「THE CURRENCY」に着想を得たもので、本プロジェクトを通じて、リアルではない「NFT」と、リアルな「レコード」、どちらの価値がより高いのか、音楽とNFTの関係性を問う試みとなった。

ゲスの極み乙女は2020年発表の『ストリーミング、CD、レコード』において、「CDが売れない」と言われる時代の中、「世界初の賞味期限付きアルバム」として、CDやレコードと形状の似たバームクーヘンを販売。また、誰もがプレイリスト機能を使って自分だけのベスト選曲ができる時代の中、マッシュアップによって新たに構築された一曲入りのベストアルバム『丸』を発表するなど、これまでもメディアやプラットフォームの変化に対して「ニヤリ」とさせられる試みを行ってきただけに、今回のNFT作品も実にゲスの極み乙女らしいアプローチだと言えよう。


「Maru」のデザインは、ロンドン在住の韓国系アーティストで、Web3.0スペースやコミュニティー文化の創造活動を行っているCentral Parkが担当。メンバー4人の顔、ギターやドラムといったバンドで利用される楽器、日本の文化を表現した鯉のぼりや駒、メンバーの出身地を代表する長崎ちゃんぽんをはじめとした食べ物など、ユニークなデザインの「丸」が組み合わせさって万華鏡の様に回転する、一点もののアートを楽しむことができる。


「Gut Feeling」アナログレコードを手にするゲスの極み乙女

最初に登壇した増井が川谷・岩瀬両名を呼び込み、簡単な自己紹介を終えると、まずはプロジェクトの立ち上げについてからトークセッションがスタートした。

川谷:今年10周年のライブがあって、最初は冗談っぽく「バンド名を変えてもいいよね」みたいな話をして、「。」を取るっていうアイデアが出てきて。「。」には「終わり」の意味があるから、「。」が取れたら「終わりがない」=「バンドが続いていく」っていう意味になっていいんじゃないかって。じゃあ、その「。」で何か面白いことができないかっていうのが今回の始まりでした。最初は一点物の「Maru」を作って、それを売るみたいな話もあったんですけど、途中でNFTのアイデアが出て、そっちの方が面白そうだなって。


左から川谷絵音(ゲスの極み乙女)、増井健仁(ワーナーミュージックジャパン)

NFTそのものに対する印象を聞かれた川谷は、当初そこまで興味があったわけではないという。

川谷:ある時期から居酒屋とかでNFTのことをしゃべってる人が増えて、最初はそういうのを白い目で見てたんですよ。「NFTって言いたいだけじゃん」みたいな(笑)。でも今回ゲスでやることになって、坂本龍一さんがピアノの一音ずつをNFTにしてたりとか(「Merry Christmas Mr.Lawrence」のメロディーを595音に分割し、1音ずつのNFTとして発売)、音楽でも面白いことをやられてる方がいるのを知って、そこからより興味を持つようになりました。


岩瀬大輔(KLKTN CEO)

続いては、元ライフネット生命共同創業者の岩瀬が、Kollecktionを設立した経緯について説明する。

岩瀬:今は香港に住んでいるんですけど、日本より半年から1年くらい早い時間軸で物事が動いていて。それこそ2020年の終わりくらいから、周りがみんなビットコインやブロックチェーン、NFTについて話すようになってたんです。その中で、特にエンタメの分野で新しい風景を作っていく可能性があるんじゃないかと思いました。もともと金融とテクノロジーが交差するところに興味があったんですけど、NFTは金融、テクノロジー、アート、グローバルという自分が興味を持ってるものが4つかけ算になったので、すごく面白いと思って、会社を作りました。


Kollektion公式ホームページより。これまでMIYAVI、大沢伸一など国内外のアーティストに携わり、ヤングマガジン編集部とのコラボも手掛けている。

Kollektionがバスケットボールのトレーディングカードをデジタル化した「NBA Top Shot」で一世を風靡したNFTスタートアップのDapper Labs出身のメンバーと共同で創業されたこと、世界の300〜400のNFTの会社に投資をしているAnimoca brandsから資金調達していることなどが説明され、岩瀬は「みんなまだ見えないものにワクワクしている感じが面白い」と話す。

岩瀬:時代が変わる節目って、どうなるかわからないことばかりですよね。今はインターネットに例えると1998年くらいじゃないかと言われていて、当時はインターネットの出始めで、まさか今のような形になるとは誰も思ってなかった。なので、今はまたこれから想像もできないような未来が待ってるんじゃないかっていう期待がすごく大きい。答えはわからないし、みんなが手探りだけど、勇気ある人たちが新しい地平を切り開いていく。その感じが面白いと思っています。

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