旧統一教会の過激分派「サンクチュアリ教会」指導者が語る、ライフル銃崇拝の理由

自ら「鉄の杖」と呼ぶ金色のAR-15を構える文亨進氏。2018年4月、米国ペンシルベニア州マタモラスの自宅にて撮影。(Photo by BRYAN ANSELM/REDUX/"THE WASHINGTON POST"/GETTY IMAGE)

旧統一教会の創設者・文鮮明氏の息子(7男)が、アメリカで設立した「サンクチュアリ教会」。彼はアサルトライフル銃「AR-15」は神の意志を実行するための神聖な道具であり、神はトランプ氏の味方であるという見解を表明している。

【写真を見る】礼拝中に銃を握りしめる信者の男性

2021年1月6日の米連邦議会議事堂襲撃事件の数日後、文亨進(ムン・“ショーン”・ヒョンジュン)氏は、SNSに扇動的な動画を投稿した(亨進氏は、もう少しで催涙ガスを浴びるほど暴動の中心から近い場所にいたそうだ)。動画の中で亨進氏は、いまではすっかりトレードマークとなっている薬莢(やっきょう)を束ねた王冠を被り、金色に輝くアサルトライフル銃「AR-15」を抱えてカメラの前で1月6日の暴動を「第2次アメリカ独立革命におけるボストン茶会事件」と言い放った。

暴動を非難するどころか、亨進氏は「サタンの玉座(つまり議事堂)を制圧」し、「世界有数の権力者たちを恐怖に陥れ、巣穴に逃げ込もうとするネズミのように狼狽させた」暴徒たちを称賛したのだ。

「あの日、神は勝利した」と、亨進氏は語気を強めて続ける。「罪人どもは、決してあの日の光景を忘れないだろう。『まずい。あれがまた起きたら、今度こそ警官は警備態勢を解いてしまうかもしれない』ということに彼らはようやく気づいたのだから」。亨進氏のいう「罪人」とは、トランプ氏のクーデターの支援を拒んだアメリカの議員たちのことだ。

亨進氏は、「Rod of Iron Ministries(銃の杖ミニストリー)」の名前で活動している旧統一教会の分派「サンクチュアリ教会」の指導者。42歳(現在は43歳)の亨進氏は、旧統一教会の教祖・文鮮明(ムン・ソンミョン)氏の7男だ。鮮明氏を「再臨のキリスト」と崇める信者たちは、ここアメリカでは「ムーニー」と呼ばれている。教祖の息子である亨進氏が率いるサンクチュアリ教会は、神の正義を実行するための道具として聖書に記された「鉄の杖」とAR-15を同一視し、銃崇拝によって注目を集めてきた。

ペンシルベニア州スクラントン郊外のニューファンドランドに本拠地を置くサンクチュアリ教会は、信者たちが礼拝に武器を持ってくることから、危険な教団と目されている。亨進氏が説くのは、世俗的な政治を織り交ぜた終末論。アメリカで武器メーカーを経営している兄の国進(クッチン)氏とともに亨進氏は、「MAGA(アメリカを再び偉大に)」に傾倒する共和党員たちのあいだで政治的な影響力を拡大しようと心血を注いできた。トランプ氏の息子たちとのコネを作ったり、毎年恒例のサンクチュアリ教会のイベント・Rod of Iron Freedom Festivalを開催したり(トランプ氏の元側近のスティーブ・バノン氏がスピーカーとして登壇)、2020年のペンシルベニア州の選挙人団の名前を刻んだ偽の名簿の最上位に自分の名前を掲載してくれた全米ライフル協会(NRA)の役員と関係を築いたりと、その活動は多岐にわたる。さらに亨進氏は、ペンシルベニア州議会のダグ・マストリアーノ議員の肝入りで同州の副知事に立候補したテディ・ダニエルズ氏を「我々の偉大な友人であり、共にキリストを信じる兄弟」と呼ぶ。ダニエルズ氏は、1月6日の暴動の参加者のひとりだ。

Translated by Shoko Natori

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