オジー・オズボーン「地獄からの生還」 過去・現在・未来を大いに語る

オジー・オズボーン(Photo by Harry How/Getty Images)

 
ニューアルバム『Patient Number 9』が好評のオジー・オズボーン(Ozzy Osbourne)。絶体絶命のピンチを何度も乗り越えてきたヘヴィ・メタル界の“アイアン・マン”が、自身のキャリア、妻シャロンとの結婚生活、『オズボーンズ』と家族との絆、最新作と故テイラー・ホーキンスとの思い出など、3時間に及ぶインタビューでたっぷり語ってくれた。


英国バーミンガムのアレクサンダー・スタジアムのVIPエントランスに銀色のバン2台が到着すると、囁き声が拡がっていった。警備員が目を細めながら同僚に訊く。「あれ、シャロン・オズボーンじゃない?」

「そうみたいね」もう一人の警備員が言う。「ということは……」

8月初旬に行われたコモンウェルス・ゲームズ(オリンピックに似た多種スポーツ・イベント)の閉会式。運転手たちは車内灯を消して文字通り真っ暗な中、エドワード王子のスピーチが終わるのを待っている。バンがステージにゆっくり向かっていき、3万人の観衆にバスドラムのドス、ドス、ドス、ドスという音が聞こえてきた。

「I am Iron Man!」我々が知っている声がどこからともなく響きわたり、ブラック・サバスのトニー・アイオミがステージでギターを弾き始める。54年前、バーミンガムで育ったサバスのメンバー達は鉄工所の労働者になるという運命を断ち切り、唯一無二の鋼鉄音楽を生み出してきた。

床の扉が開き、腕を伸ばしたシルエットがアイオミの背丈までせり上がってくる。「さあバーミンガム、声を聞かせてくれ」と指示する姿にスポットライトが当たると、そこにはサバスの創設メンバーでありフロントマン、オジー・オズボーンがチェシャー猫のような笑顔を浮かべていた。

観衆は地元バーミンガムの英雄に気付き、信じられないという表情から一転、耳をつんざく声援を送る。そうしてサバスは「Iron Man」から彼らの最大のヒット曲「Paranoid」へと雪崩れ込んでいった。

この日彼らが出演することはトップ・シークレットで、たまたま観衆の中にいたオジーの息子ルイスもステージ上の父親を見て驚いたほどだった。



筆者は最前列でアスリート達と一緒にいるシャロンとケリー・オズボーンに合流する。彼らは喜色満面だが、それも無理はないだろう。ケガや手術の連続でもはや二度と人前で歌うことが出来ないと思わせたオジーがほぼ3年ぶりにステージに立ったのだ。

オジーの体調はややヨレがちだったものの、よどみなく「クレイジーになろうぜ!」「神の祝福を!」など自らのキャッチフレーズを連発。曲が終わり、彼の回りを火花が散ると「バーミンガム・フォーエバー!」と吠えた。

明かりが落ちると、イギリスではお馴染みの、王族が公の場に姿を現したときの道路封鎖に巻き込まれないように、オジーと家族はバンに避難する。エドワード王子などどうでもいい。暗黒の王子のお通りだ。

Translated by Tomoyuki Yamazaki

 
 
 
 

RECOMMENDEDおすすめの記事


 

RELATED関連する記事

 

MOST VIEWED人気の記事

 

Current ISSUE