リトル・シムズ来日公演、怒涛のラップと荘厳なサウンドで畳み掛ける「粋」な舞台

リトル・シムズ(Photo by Tamiym Cader)

UKラップの最高峰、リトル・シムズ(Little Simz)の単独公演が9月21日にKANDA SQUARE HALLで開催された。9月23日(金・祝)にはカマシ・ワシントンとともに「ODD BRICK FESTIVAL 」に出演する彼女のステージを、文筆家・ライターのつやちゃんがレポート。

【画像を見る】リトル・シムズ ライブ写真(記事未掲載カットあり)

満員の神田スクエアホール。2、3年前の『GREY Area』リリース時ならまだしも、2022年の現在、天下のリトル・シムズをこのサイズの箱で観られるなんて途方もない贅沢だ。本来ならばもっと大きい場所で、そうなるとバンドセットで……ともなろうが、今回はクラブライクなシチュエーションにて1MC+1DJのミニマムなステージを披露するという、これはこれでクールな体験。リトル・シムズが信頼を寄せるDJ、OSIRIS THE GOD a.k.a OTGが開演まで素晴らしいプレイでフロアをあたためる。Peggy Gou、Rema、Lojay等のハウス/テクノ~アフロビーツをミックスし、途中アマピアノも織りまぜながらシムズに流れるアフリカの血を讃えることで、ライブへの期待を高めた。


Photo by Tamiym Cader

ついに、イントロが流れ観客がどよめく。もちろんオープニングは“Introvert”! フロア中の観客の胸の高鳴りが、荘厳なサウンドとともに盛りあがり熱くなっていく様子が感じられる。シムズは中央のマイクの前に立ち安定のラップを聴かせるが、簡素なステージからこんなにもゴージャスな音が聴こえてくることが信じられない。続いて、「Lady,Lady,Lady,Lady,Lady……」という掛け声。フロアから悲鳴があがる。“Two Worlds Apart”に突入だ。音源にあったソウル由来のあたたかさを感じさせながらも、加えて熱さも伴う力強いラップで世界観を表現していく。“I Love You,I Hate You”では、リリックで綴られる通りLoveとHateで逡巡する混乱した自身の焦燥感を、畳みかける怒涛の早口ラップで披露。スピーディーだがきちんと旋律も伝えるという、ストイックさと華やかさが同居した素晴らしいラップに唸る。


Photo by Tamiym Cader

続いて“Offence”、“Boss”と『GREY Area』のナンバーへ。最新作『Sometimes I Might Be Introvert』よりもドープでダビーな音が、昨今のUKビートシーンに漂う怪しさを伝える。シムズはここではリリックに合わせストロングなラップをぶつけてきた。中盤の印象的なフレーズを自らキーボードで叩いた“Speed”もスリリングだったが、驚いたのは“one life,might live”。意外にもEP『DROP6』からの選曲である。抑制された音数のトラックの隙間を埋めるような形でシムズは身体を揺らし、端正な所作で会場にすんとした空気を生み出していく。このあたりは、さすが俳優やモデルとしても活躍しているこのラッパーの中に宿る審美性が顔を覗かせ、見惚れるしかない。

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