クリープハイプが纏うTOD’S――メンバーが語るものづくりの目覚め
イタリアが誇る伝統と革新、そしてクラフツマンシップを重んじるレザーブランドTOD’S(トッズ)。Rolling Stone Japan vol.20にて初のコラボレーションが実現したクリープハイプ✕TOD’Sのファッションストーリーをお届けする。トッズのローファーを纏ったメンバーが語る、「ものづくり」の目覚めとは?
性急なバンドサウンドと詩情にあふれた歌詞、ジェンダーレスなハイトーンボイスで日本の音楽シーンに衝撃を与えた2012年のファーストアルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』から今年でメジャー10周年を迎えた4人組バンド、クリープハイプ。昨年12月には通算6枚目となるニューアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』をリリースし、その収録曲「ナイトオンザプラネット」をもとにした松居大悟監督によるラブストーリー『ちょっと思い出しただけ』が公開されるなど、ジャンルを超えて今なお多くの人々に支持され続けている。
「小学生の頃、図工の授業で出された課題をその通りにやるというよりは、自分で自由に作る方が好きでした。『正解』がないものを作るのが楽しかった記憶があります。きっと音楽もそれに近いと思いますね」
ほぼ全ての楽曲を手がけるボーカル&ギターの尾崎世界観に、「ものづくり」に目覚めたきっかけを尋ねるとこのような答えが返ってきた。「子どもの頃は他にもいろいろチャレンジしていて、どれもすぐに辞めてしまった中で、思いのほか長く続いたのが音楽でした。それも、『完成』というものがそこまで定まっていない表現だからかもしれません」
バンドのベーシストであり、他にも様々な楽器を演奏し作曲も手がける長谷川カオナシは、幼少期に定められた「家庭内ルール」が自身のクリエイティビティに大きな影響を与えたと語る。
「子供の頃からテレビゲームが好きだったのですが、1日30分しかやってはいけないと言われてたんです。なので30分が経ってしまったあとは、ゲームのパッケージやカートリッジのラベルを眺めていました(笑)。それだと飽き足らず、今度はゲーム画面を思い出しながら絵に描いてみるんですけど、それなら時間の制約なしにいくらでも遊べるじゃないですか。今振り返ってみると、それが『ものづくり』の原点だった気がしますね」
まずは「模倣」からオリジナルへと「ものづくり」を発展させたのは、ギタリストの小川幸慈だ。「高校生の頃にギターを始めて、友達と組んだバンドで好きな曲のコピーをしていたのですが、続けていくうちにそれだけでは満足できなくなってきて。『自分たちでもオリジナル曲を作ってみる?』みたいな話になり、いろんな曲の仕組みを自分たちなりに分析してみるようになりましたね」
人の心を動かすような仕事がしたい。高校時代、そう漠然と考えていたのはドラムスの小泉拓。「『せっかくこの世に生まれたんだから、何かしら証のようなものを遺してから死んでやる』という気持ちが以前からありました。ちょうど自分の周囲にお笑い芸人やミュージシャンを目指す友人たちがいたのもあり、自分でもやってみようと。そんなときにちょうどドラムという楽器に出会ったんです。ドラムを叩き、それが音源として残れば生きた証になる。そう気づいてさらにバンド活動へとのめり込んでいきました」
そんな4人はいつも、どのようなプロセスを経て楽曲を完成させているのだろうか。
「スタジオで、ちょっとしたアイデアの断片をメンバーに聞いてもらったり、まずはコード進行だけ伝えてみんなでセッションのように演奏をしてみたり。そこで生まれたアイデアなども取り入れながら、楽曲の方向性を探っていく感じです」と尾崎。楽曲に引っ張られて歌詞のテーマが出てきたり、逆に言葉ありきでメロディを考えたりすることはほとんどないという。
「メロディが決まった段階で、そこに当てはめられる文字数も決まってくるので、そういう意味では影響を受けていますけど。何か明確に『これを訴えたい』というメッセージや、自分の感情を言葉に込め過ぎないようにしています。もっと数学っぽい発想というか、『ここにこういう言葉を入れるなら、ここにはこんな言葉が入るかな』という作り方をすることが多いです。メジャーデビューして5年くらい経った頃から、そうなっていきました。とにかく、作品をリリースし続けるということが一番大事だと思っています」
プロとして作品を作り「続ける」には、ある意味では職人的な姿勢が求められるのかもしれない。今回、彼らが着用しているローファーも、クラフツマンシップにこだわるTOD'Sのもの。イタリアのデッラ・ヴァッレ家により20世紀初頭にシューメーカーとしてスタートし、1970年代後期に設立されたラグジュアリーレザーブランドは、機能性とそれを失わないモダンなデザインが特徴だ。
「普段はスニーカーを履くことが多いので、『靴を履いたな』という感覚がより強く残りますね」
トッズの履き心地について、そう説明する尾崎。「自分が作っている音楽も、聴いた人にとって馴染みが良すぎて溶け込んでしまうよりは、何かしらカタチとなって残ってくれた方が嬉しいので、そういうところはトッズの存在感に通じるものがありそうです」
普段から革靴を履き慣れている小川も、トッズの革の柔らかさには驚いた様子。また、普段はスニーカーを履くことが多いというカオナシと小泉も、「履き慣らす前からしっくりくる」、「たまにこうやって履くと気持ちも引き締まっていい」とそれぞれ太鼓判を押す。中でも小泉は、「割とジェンダーレスなデザインというか。履いていると背筋が伸びて、足も綺麗に揃えたくなる。だらしなく足を広げて座るのを躊躇させる靴だなと思いました」とトッズのフォルムを絶賛していた。
思えば音楽もファッションも、「自己表現の手段」という共通点を持つ。メジャーデビューから10年を経て4人のファッションへのこだわりには、何か変化があったのだろうか。
「細かいことを気にしなくなってきました。特にライブをしている時は、自分がどう見られているか、あまり気にならないようなシンプルな服装が最近は好きですね」そう話す尾崎に小泉も、「服を選ぶときに、周りの目をそんなに意識しなくなりました」と同意する。それに対しカオナシは、「ライブ中は雑念を払うため、自分が自信を持って『カッコいい』と思える服を選ぶべきだし、それは身の丈に合ったものの中で選ぶようになってきました」と話し、普段から革靴をよく履く小川は、「昔は靴にオイルを塗らず、すぐに傷んでしまって……。そのダメージ具合も当時は『味だな』とか思っていたのですが、今はちゃんと手入れをして大事に履いた方がいいかなと。そういう気持ちの変化が出てきました」と微笑んだ。
歳を重ねるにつれ、ファッションも「自然体」を重視するようになってきたという4人。トッズのローファーは、そんな彼らのコーディネートに絶妙なアクセントを加え、新たなクリエイティブへの一歩を踏み出す一助になるかもしれない。
PROFILE
クリープハイプ
尾崎世界観(Vo/Gt)、小川幸慈(Gt)、長谷川カオナシ(Ba)、小泉拓(Dr)からなる4人組ロックバンド。2012年、アルバム『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』でメジャーデビュー。2014年には日本武道館2days 公演を行うなど、シーンを牽引する存在に。 2018 年の5月11日には約4年ぶりとなる2度目の日本武道館公演「クリープハイプのすべて」を開催。2021年12月に6thアルバム『夜にしがみついて、朝で溶かして』をリリース。新曲『愛のネタバレ』が9月末リリース予定。
問い合わせ先
トッズ・ジャパン
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