マネスキン、サマソニの伝説的ライブで体現した「新世代のロック」と「平等意識」

マネスキン、サマーソニック2022東京公演にて(©SUMMER SONIC All Rights Reserved.)

 
8月18日の単独公演、8月20日・21日のサマーソニックで見せた熱狂的パフォーマンスで、一気にその名を日本中に轟かせたマネスキン(Måneskin)。大観衆を魅了したサマソニ東京公演の模様を、音楽ライター・新谷洋子がレポート。

【写真を見る 全17点】マネスキン サマソニ東京公演(記事未掲載カット多数)

ひょっとしたら伝説化する可能性を秘めたパフォーマンスを目撃したのかもしれない。「あの時サマソニでマネスキン観た?」と後々語られるような。2021年5月のユーロヴィジョン・ソング・コンテストでの優勝を機に、ロックバンドとしては昨今異例の世界的大ブレイクを果たしたイタリアン・バンドは、それくらいに華々しくエンターテイニングな、耳にも目にも刺激満点の(目への刺激が強すぎたという声もあるが)ロックンロール・ショウを披露し、オーディエンスを湧かせ、颯爽と大舞台に足跡を刻んでいった。

豊洲PITでのソールドアウトの単独公演を経て、8月20日、サマーソニック2022の東京会場・MARINE STAGEに登場した彼らのスロットは、前はマキシマム ザ ホルモン、あとにはKing GnuとThe 1975が控え、初出演としてはかなりの好位置。空はどんより曇り始めていたが、巨大なロゴを配したステージに、ゴールド・ラメやフリンジ、スネークスキン、レース、そして大量のアイライナーとタトゥーでデコった4人が現れるなり、MARINE STAGEは異様な高揚感に包まれる。フロントマンのダミアーノは最初っから上半身裸をさらし、万全の態勢だ。


©SUMMER SONIC All Rights Reserved.


Photo by Mitch Ikeda

と、耳に飛び込むのはあのモンスター・リフ。ユーロヴィジョンのエントリー曲「ZITTI E BUONI」(ジッティ・エ・ブオーニ)で口火を切って単刀直入に本題に入り、1曲目からまるで大団円! 時間を無駄にしない。以下、1時間半近かった単独公演のセットリストからアップテンポな曲を絞り込み、2ndアルバム『Teatro D’ira: Vol.I』(テアトロ・ディーラVol.I))からの「IN NOME DEL PADRE」(イン・ノーメ・デル・パードレ)及び「FOR YOUR LOVE」、過去1年間にチャートを騒がせた「MAMMAMIA」(マンマミーア)や「SUPERMODEL」といったシングル曲で、計8曲の濃密な45分間を構成。その間4人のメンバー――ジミー・ペイジにもジョン・フルシアンテにも同等に借りがありそうなトーマス(Gt)、しなやかにグルーヴを紡いで彼のリフ&ソロを下から持ち上げるヴィクトリア(Ba)、長い黒髪をなびかせながら精緻なビートを打ち鳴らすイーサン(Dr)、個性的な歌声の持ち主であるのみならず、申し分ない歌唱力と声量に恵まれたダミアーノ――は、見た目の華と存在感とショウマンシップを競い合うようにして広くステージを使い、上昇気流に乗っているアーティストならではの勢いで、ラウドな、ファンキーな、グラマラスなミクスチャー・ロックを迸らせる。クリシェ気味の派手なステージ・アクションですらやたら様になる、稀有なバンドだ。


Photo by Mitch Ikeda


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Photo by Mitch Ikeda

しかしそんな彼らも多分、東京でこうまで熱いリアクションが待っているとは想定していなかったと思う。驚くほど若い層を集めた単独公演の盛り上がりも尋常ではなかったが、アリーナ席前方を埋め尽くしたオーディエンスは、全身でエキサイトメントを表し、パンデミック下で許される範囲内で最大限に声を上げ、フランキー・ヴァリ&ザ・フォー・シーズンズのカバーである『Beggin‘』では、ダミアーノが冒頭のフレーズ“Put your loving hands out…”と歌うと、あとを引き継いで、コール&レスポンスで曲が進行。単独公演でも同様のことを言っていたが、「日本人は大人しいんだって散々聞かされてきたけど、なんだよ、嘘っぱちじゃないか!」としきりに感嘆するダミアーノ、前日に脇腹に入れたという竜のタトゥーを示して、「これで永遠に日本が自分の一部になった」と微笑んでいたものだ。

実際のところ、海外の新人ロックバンドがこうまで歓迎されている光景を見たのは久しぶりなのだが、理由としてひとつ思い当たるのは、『ボヘミアン・ラプソディ』効果である。つまり、クイーンをリアルタイムで体験していないにもかかわらず、あの映画に夢中になった若者たちに、マネスキンがある種の胸騒ぎを与えたと考えるのは飛躍し過ぎだろうか? 自分たちの世代のクイーンを見つけたのかもしれない――と。

 
 
 
 

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