映画『エルヴィス』から考察するプレスリー流ファンク、鳥居真道が徹底解剖

大瀧詠一の伝説的なライナー目当てにゲットしたボックス

ファンクやソウルのリズムを取り入れたビートに、等身大で耳に引っかかる歌詞を載せて歌う4人組ロックバンド、トリプルファイヤーの音楽ブレインであるギタリスト・鳥居真道による連載「モヤモヤリズム考 − パンツの中の蟻を探して」。第36回は映画『エルヴィス』をもとに、エルヴィス・プレスリーのファンキーな側面を考察する。

過日、『ムーラン・ルージュ』や『華麗なるギャツビー』などで知られるバズ・ラーマン監督の新作『エルヴィス』を観てきました。タイトルが示すとおりエルヴィス・プレスリーの伝記映画です。彼の悪名高きマネージャー、パーカー大佐とエルヴィスの関係が物語の柱となっています。これが本当に傑作で、劇場を後にしてからというものエルヴィスづいている今日このごろであります。

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エルヴィスを演じるのはオースティン・バトラーという俳優です。見た目はそれほど似ていないものの、仕草や声色の作り込みがはんぱではないと感じました。歌唱シーンの多くが当て振りではなくバトラー本人によるものという点にまず驚きます。むろん別の人間だから完コピすることは不可能なのですが、的確に特徴は捉えているし、バトラーの声も艶やかで良いのです。後半はエルヴィス本人の声とミックスされているそうですが、シームレスに繋がっており違和感はありませんでした。



『エルヴィス』でもっとも印象に残っているのは、映画の序盤、エルヴィスがルイジアナ・ヘイライドというカントリー・ミュージックのショーに出演するシーンです。パーカー大佐がエルヴィスを見出す場面です。エルヴィスはここで「Baby Let’s Play House」を歌います。小刻みに震えるエルヴィスの足を見た女性客たちは思わず嬌声を上げます。それに気がついたバンドメンバーはエルヴィスにもっとやれとけしかけます。エルヴィスはその動きをエスカレートさせ、女性客たちの吐息を絶叫へと変えていきます。エルヴィスと女性客との間で交わされる非言語的な応酬により会場は興奮の坩堝と化します。ステージに駆け寄った女性客たちはエルヴィスの腕を掴んで放しません。パーカー大佐は金の卵を見るかのようにエルヴィスへと眼差しを向けます。

Rolling Stone Japan 編集部

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