レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン11年ぶり復活ライブ 混迷の時代に4人が帰ってきた

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーン(Photo by Getty)

レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンが7月9日、実に11年ぶりとなるライブを開催。ウィスコンシン州で行われた「Public Service Announcement」ツアーのキックオフ公演で、現在のアメリカを語るうえで新曲は必要ないことを証明した。米ローリングストーン誌のライブ評をお届けする。

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レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの11年ぶりとなるコンサートの終盤、ザック・デ・ラ・ロッチャはステージの先端まで歩いていき、目を細め、「Killing In The Name」のクライマックスで“fuck you, I won’t do as you tell me”と声を上げると、およそ3万人のファンも一緒になって叫ぶ。まだ20歳そこそこなのに、彼の足元でクラウド・サーフィングするファンの姿も見えた。



それは、バンドが2019年にツアーを発表し、パンデミックのために何度か延期して以来、レイジのファンが待ち望んでいたカタルシスの瞬間であった。当初の予定ではテキサス州エルパソの国境近くにある小さなアリーナからスタートすることになっていたが、結果としてウィスコンシン州イースト・トロイのアルパイン・ヴァレー・ミュージック・シアターでキックオフを迎えた。会場キャパの37000人に限りなく近い観客が訪れていたようだ。

最後のアルバムを発表してから20年以上が経過し、再結成までにかなりの時間を要したバンドが、円形劇場やアリーナで再び公演を行っても注目を集めることはほとんどないだろう。

だが、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンは非常に稀有なケースで、このツアーは全米でソールドアウトしている。彼らはラップとロックを完璧に融合させた、ロック史上最もスリリングなライブアクトであるだけでなく、その政治色の強い音楽は時代を何十年も先取りしており、まさしく“いま”のためにカスタムメイドされたようにも感じられる。

オープニングアクトのラン・ザ・ジュエルズがエネルギッシュな演奏を披露したあと、レイジは1992年に発表したセルフタイトルのデビューアルバムから「Bombtrack」を爆発的に鳴らしてライブをスタートさせた。ザックは過去10年間、ほとんど公の場に姿を現すことはなかったが、このツアーに向けて明らかに準備をしてきたようで、ほぼ完璧なボーカルと底なしのエネルギーは、52歳という実年齢より少なくとも10歳は若々しく見えた。彼らは「People of the Sun」、「Bulls on Parade」と続けて、観客を熱狂させる。

そこから90分以上にわたって13曲(全16曲)を披露。時折ステージから離れると、炎上しているエルパソのパトカー、ボートで避難している人たちの上にヘリコプターが降りてくる様子、ドローンとシェパードのそばに立つ厳しい顔つきの国境警備隊員といった映像がスクリーンに映し出された。2000年を最後に演奏してこなかったブルース・スプリングスティーン「The Ghost of Tom Joad」のカバー、熱狂的な「Guerrilla Radio」、ワイルドな「War Within a Breath」などがハイライトに挙げられる。

ギタリストのトム・モレロ、ドラマーのブラッド・ウィルク、ベーシストのティム・コマーフォードは、クリス・コーネル(オーディオスレイヴ)、チャックDやB・リアル(プロフェッツ・オブ・ザ・レイジ)ともこれらの曲を数多く演奏してきたが、ザックのように表現できる者は他にいない。ジミー・ペイジがデイヴィッド・カヴァデールと廻ったツェッペリン色の強いツアーや、カーズがリック・オケイセックの代わりにトッド・ラングレンを迎えたニュー・カーズなどと比較するのはアンフェアかもしれないが、つまりはそういうことである。

Translated by Rolling Stone Japan

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