中島みゆきの救いと愛、ラスト・ツアーを瀬尾一三と語る

あたいの夏休み / 中島みゆき

田家:この曲の間に衣装替えがあったりするわけで。

瀬尾:その間、ミュージシャンのプレイを楽しんでいただこうと思って、各パート、サックス、シンセサイザー、それからギターというふうに16小節ずつ回したんですけども、みなさん上手いのでフリージャズみたくなっています(笑)。

田家:このリハーサルの映像の中に瀬尾さんがみゆきさんの衣装替えが速いので驚いているシーンがありました。

瀬尾:本当はもっと長かったんですよ。衣装替えが何分かかるか分からないので本当は間奏がもっと長くて。「じゃあ、ちょっと減らすね」って言って減らしていったんですけども、それで今の長さになった。

田家:特典映像の中の「あたいの夏休み」に関することで、エンディングが短くなったりしている。これも瀬尾さんが「エンディングを短くしてね」みたいな話をされていて。アウトロか。

瀬尾:そうです。いろいろとその後に問題の空欄の15曲目が(笑)。

田家:これはコンサートをご覧になった方、それからコンサート会場でツアーパンフをお求めになった方しか知らないことですけどね(笑)。

瀬尾:実は幻の15曲目というのがありまして、「旅人のうた」はこれもずっとリハはやっていたんですよ。

田家:リハーサルの映像の中で出てきますもんね。

瀬尾:「あたいの夏休み」はそれに繋がるようになっていたんです。それが突如、「旅人のうた」をやらないということになったので、繋げることが必要ではなくなった。急遽「あたいの夏休み」のエンディングを作らなきゃダメになりまして、それで短く作りました。

田家:なぜなくなったかは、みゆきさんがステージでお話をされていますけどもね。

瀬尾:トイレ時間です(笑)。休憩が15分という予定で組んでいたんですけども、15分を20分にするから1曲減らすとなって。ちょうどいいのをずっと探してたら、中島さんが「あ、5分ぐらいのがあった」って言ったので「なに?」って言ったら、「「旅人のうた」だ」って。じゃあ、それをカットしましょうってことで、ゲネプロの日かなんかがあって、そこでみなさんに発表して、「えー!」とかって言っているやつです(笑)。

田家:コンサート会場に行って、コンサートパンフをお求めになった方と、ライヴアルバムだけしか情報がない方とは話がなかなか噛み合わなかったりするかもしれないというのが、「旅人のうた」でありましたが。

瀬尾:ちょこっとリハーサルで歌っているので、それで許してください(笑)。

田家:そろそろ大詰めに差し掛かっております。何回も申し上げてますけども、このツアーの選曲、最初で最後ならではの流れになっておりまして、後半4曲はその極めつけ。

瀬尾:どの曲で幕を下ろしてもいいような曲ばかりですね、続いちゃって。

田家:どんな4曲かと言いますと、「麦の唄」と「永遠の嘘をついてくれ」が続いておりました。その後に「慕情」と「誕生」という倒れそうな4曲が残りました。

瀬尾:これ絶対普通のツアーだったら、どれか1曲で終わっていますね。所謂コンサート終わりですね。コンサート終わりの曲をこんなに続けてやってしまうというのは、よほどの本人の覚悟だと思います。歌うのにもエネルギーがいるし。

田家:「慕情」と「誕生」は来週お聴きいただこうと思うのですが、今週は「麦の唄」と「永遠の嘘をついてくれ」これが繋がりましたー。希望の歌と世捨て人の歌みたいな(笑)。

瀬尾:はははは! いやいや、そうでもないですよ! どっちも希望の歌ですよ(笑)。「永遠の嘘をついてくれ」も希望の歌ですよ。

田家:しかも「まっさん」と「つま恋」という象徴するエピソードもあるわけで、この2曲を繋げたときの共通するイメージはどういうものだったんですか?

瀬尾:彼女の繋げ方は対照的なものを繋げるというのが結構多いと思うんですよね。「麦の唄」みたいな人間としての男女の愛と、「永遠の嘘をついてくれ」は男の友情みたいな。いつまでの俺の理想であってくれよという。はじめこの曲を吉田(拓郎)さんのための作ったときに、めちゃくちゃこの人皮肉屋だなと思って(笑)。それを何気なく歌っている吉田さんもすごいなあと思って。これはつま恋で2人を一緒にそこで合わせられたのは、自分の中でも誇りに思っている顔合わせができたのでよかったなと思っているんですけども。何しろ、中島さんは根本的には愛なので、どんなに惨めなところを歌おうと何をしようと、救いと愛が入っているのでそれは共通しているものだと思います。

田家:それがこうやってメドレーで繋がるとよく分かるかもしれません。

Rolling Stone Japan 編集部

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