ウクライナの人気ロックスターが、母国防衛に協力する理由「今は戦士になるしかない」

スヴャトスラフ・ヴァカルチュク(Photo by Helen Bozhko)

「戦争前はジョン・レノンの『イマジン』が俺の信条だった……だが、子どもたちを殺そうとするような奴が現れたら、話は別だ」。そう語るスヴァトスラフ・ヴァカルチュクは、ウクライナでもっとも有名なロックスターの一人だ。

【動画を見る】広場で歌い、市民の士気を高めるヴァカルチュク

90年代にウクライナ西部リヴィウで仲間と結成した国民的ロックバンド、オケアン・エレウズィのボーカルを務めるヴァカルチュク。世界各地をツアーで回る彼らの音楽は、ウクライナとは切っても切れない存在である。政治的問題にも恐れず真正面から立ち向かい、2004~2005年のオレンジ革命では民主改革を訴え、2014年のマイデン抗議運動にも一役買い、2014年のクリミア併合以降はロシアでの演奏を拒み続けている。スラヴァの愛称で知られるヴァカルチュクは一時期政界に進出し、30代初めにしてウクライナ議会の副議長を務めたが、アーティスト活動のほうが国に変化を起こすチャンスが広がると判断した。

2月24日、ロシアが祖国に全面戦争を仕掛け、数時間後にロシアのウラジミール・プーチン大統領が「特別軍事作戦」を公表した時、ヴァカルチュクはキエフの自宅で最初の爆撃を耳にした。「あれは本当、悪夢だった」と彼は言う。「爆発の直前に目が覚めた。なぜだかわからないが、胸騒ぎがしたんだ。直感だよ」。だが恐怖におののく暇はなかった。彼はすぐに行動を起こし、有名人としてのコネや地位を活かして、民間人が街を出て安全な場所へ避難するのに手を貸した。

彼は数日のうちにチームを集め、陸軍中尉に任命された。ミュージシャンである彼は街から街へと移動しては部隊を慰問し、前線に必需品を届け、ウクライナ人の士気を高めた。彼が目にした惨状や苦難は痛烈だったが、心打たれる熱意やガッツも目の当たりにした。「俺は一番の愛国者だし、ずっと国民を大事に思ってきたが、そんな俺でも驚いたよ」と彼は言う。「ウクライナ人は100点満点の勇気、戦闘力、抵抗力を見せた。今、ウクライナは世界でもっとも偉大な国だと思う」

ヴァカルチュクはローリングストーン誌に、現在行なっている活動やアーティストとして国を守ることの意義について胸の内を語った。また戦争下で聴いている音楽について、それから国際社会に何を望むか、ウクライナを支援するために何ができるかを熱く語ってくれた。以下その発言をお届けする。

Translated by Akiko Kato

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