ツタロックフェス2022:クリープハイプの真骨頂、見事なフェスの締めくくり

クリープハイプ・尾崎世界観(Photo by Taichi Nishimaki)

 
本日3月20日、幕張メッセ国際展示場9・10・11ホールで開催中のツタロックフェス2022。クリープハイプのクイックレポートをお届け。

【写真を見る】クリープハイプのステージ(記事未掲載カットあり)

「最後まで残ってくれて本当にありがとう。あいかわらずエゴサーチすると、お母さんと一緒に行くから、あの曲はやらないでくださいって、うるせえな。こっちだってお父さん来てんだよ(笑)。だから、胸を張ってセックスの歌から始めます」

冒頭、尾崎世界観(Vo, Gt)が笑いを取りながら、アーティストとしてのアティテュードをアピールしてから、セックスの歌だというたたみかけるようなロック・ナンバー「HE IS MINE」で演奏を始めたクリープハイプは、そこから約1時間。今年、メジャーデビュー10周年を迎えるバンドらしいスキのないプロットを持つ全10曲を披露して、最後まで残った観客(がほとんどだったと思う)を楽しませた。

その「HE IS MINE」から繋げた長谷川カオナシ(Ba, Cho)がグルービーなフレーズを弾きながら、リード・ボーカルも担当した「月の逆襲」、そして「イト」というダンサブルなポップ・ナンバーで客席を盛り上げ、一気に一体感を作りあげてからの中盤のブロックでは、そんな序盤から一転、ちょっとテンポを落として「キケンナアソビ」と「ナイトオンザプラネット」の2曲を披露。エスニックなシーケンスを交えたサウンドのおもしろさを、人の心の澱みを歌った歌詞とともに楽しませた前者。ワウを踏んだ小川幸慈(Gt)のソウルっぽいギターのカッティングと尾崎のラップが作るグルーブが観客の体を静かに揺らした後者(この曲では長谷川がピアノを弾いた)。ともにクセのある楽曲の魅力を印象づける。

因みに「ナイトオンザプラネット」を演奏する前に尾崎は高校生の頃、TSUTAYAでなんとなく借りた映画(もちろん、ジム・ジャームッシュの『ナイト・オン・ザ・プラネット』)のセリフから名前をいただいたバンドを、メンバーは死ぬほど変わったけど、今もやっているというツタロックフェスならではと言えるエピソードも披露しながら、「その時の延滞料をこの場で返します」と言った。

「そのTSUTAYAはもうなくなってしまって、寂しいけど、このステージにトリとして立てることがうれしいです。これからもっとトリをやっていけるようがんばっていこうと思いました」(尾崎)




Photo by Taichi Nishimaki

そこからちょっとムーディーになった空気を一新するように後半戦は小泉拓(Dr)の手数の多いドラムが演奏を華やかなものにした「君の部屋」、Wミーニングを持つ歌詞に思わずニヤリの「一生に一度愛してるよ」、ギターのみならず、べースも轟音で鳴る「しょうもな」というロック・ナンバーをたたみかける。

そして、1曲目とは逆に、この曲が聴きたいという観客の気持ちに応えるように「栞」を演奏してからのラスト・ナンバーは、尾崎の弾き語りにバンドの演奏が寄り添うように加わったバラードの「exダーリン」だった。

「本当に遅くまで残ってくれてありがとう」(尾崎)

その感謝を伝えるという意味で、別れた恋人への未練を歌い上げるこの曲ほどラスト・ナンバーにふさわしい曲はなかっただろう。そのビターな味わいは、まさにクリープハイプの真骨頂。さっきまであんなに盛り上がっていた観客が息を殺すようにじっと尾崎の歌に聴きいっている光景は、クリープハイプらしい見事なフェスの締めくくり方だった。


SET LIST

M1. HE IS MINE
M2. 月の逆襲
M3. イト
M4. キケンナアソビ
M5. ナイトオンザプラネット
M6. 君の部屋
M7. 一生に一度愛してるよ
M8. しょうもな
M9. 栞
M10. exダーリン

※「ツタロックフェス2022」クイックレポート一覧はこちら

 
 
 
 

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