ツタロックフェス2022:Vaundy、若きポップスターの凄まじいポテンシャル

Vaundy(Photo by Taichi Nishimaki)

本日3月20日、幕張メッセ国際展示場9・10・11ホールで開催中のツタロックフェス2022。Vaundyのクイックレポートをお届け。

【写真を見る】Vaundyのステージ(記事未掲載カットあり)

TempalayがエギゾチックでサイケデリックでSF的な色に染め上げたステージに登場し、一気に自分色に塗り替えたのはVaundy。「不可幸力」「踊り子」と、1万2000人もの音楽ラバーたちが今まさに聴きたがっている曲をド頭からぶっ放す。「不可幸力」では会場全体が揺れて、「踊り子」では自然とクラップが湧き起こる。「不可幸力」ではBOBO(Dr)のリバーブがかかったスネアの音が気持ちいい。

「踊り子」では、最後のサビを歌う前に無音の数秒間があった。約40分間のステージの中で、Vaundyだけがピンスポットで照らされる場面も多々あった。そのような状態でステージど真ん中に堂々と立つVaundyのパフォーマンスからは、動かずに立っているだけで大きな歓声を巻き起こしたマイケル・ジャクソンのようなレジェンド的ポップスターたちの佇まいの一片を、彼はすでに獲得しかけているように見えた。

「napori」の後、短いMCを挟んで「新曲いっちゃおう」と披露したのは『彼とオオカミちゃんには騙されない』の主題歌「恋風邪にのせて」。そして壮大なアレンジが幸福感を増幅させる「しわあわせ」へ。Vaundyの楽曲にはDメロやアウトロが印象的なものがいくつもあるが、特にそれが象徴的な「しわあわせ」で息を呑むようなアウトロを繰り広げた後は、オーディエンスが拍手をせずにはいられない状態となる。またMCを挟んだ後、『王様ランキング』のOPテーマである「裸の勇者」を披露。アニソンを愛するVaundyによる、アニソンの文化を発展させようとする気概を感じる一曲だ。

この日他の出演者のときは、ステージ横にある大きなスクリーンにライブ映像が映されていたのだが、Vaundyのときだけはスクリーンに「Vaundy」のロゴだけが映し出されているままだった。ライブでは歌を歌う自分とバンドメンバーのパフォーマンスに集中してほしい、ステージ上の人間から放たれるエネルギーでオーディエンスを圧倒させたい、といった考えを持っているVaundyならではのフェスのステージの作り方だと言える。




Photo by Taichi Nishimaki

最後は「怪獣の花唄」を演奏し、オーディエンスが飛び跳ねて大団円を迎える。そしてステージが終了した瞬間、会場全体がどよめきに似た声に包まれる。各々がステージを見終えた後の感動を口にしているのだろう。フェスにおけるVaundyのポテンシャルは、凄まじい。プレイリストを完成させるかのようにアルバムを作り、アルバム以降も出す曲すべてを異なる音楽性に仕上げているVaundyに30〜40分のステージを託すと、バラエティーに富んだ曲を次々と披露し、オーディエンスの身体を揺らしたり飛び跳ねさせたりオーケストレーションで圧倒させたりと様々な音楽の楽しみ方を提供してくれる。さらに、生活の中で自然と耳に入っていて、Vaundyのヘヴィリスナーでなくとも「どこかで聴いたことある」と感じる曲ばかりで、オーディエンスを一切飽きさせないステージを繰り広げてくる。

Vaundyというアーティストの音楽が多くの人に受け入れられている理由の一つは、実は「踊り子」の最後で本人が歌っていると、私は思っている――“時代に乗って僕たちは 変わらず愛に生きるだろう 僕らが散って残るのは 変わらぬ愛の歌なんだろうな”。もともと自分にも他者にも愛を持てなかったというVaundyは、多くの曲で愛の形を歌い続けている。愛、つまりは人と人の関係で湧き起こる感情こそ、どれだけ世の中の有り様が変わっても人間にとって最も普遍的なものである。だからこそ、愛を歌った音楽は時代を超えて愛され続ける可能性があると言える。Vaundyはそれを理解した上で、時代を超えるポップスを作ろうとしているのだ。この先のVaundyの音楽やクリエイティブ全般の才能のさらなる開花とともに、現在21歳の彼が多くの他者と自分にまつわる愛を知って綴る言葉や作る音楽がどう変化していくのかが、非常に楽しみだと思う。


SET LIST

M1. 不可幸力
M2. 踊り子
M3. napori
M4. 恋風邪にのせて
M5. しわあわせ
M6. 裸の勇者
M7. 泣き地蔵
M8. 花占い
M9. 怪獣の花唄

※「ツタロックフェス2022」クイックレポート一覧はこちら

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