ピンクパンサレス以降に台頭が続く、「ガーリー」なドラムンベース新世代

ピンクパンサレス『to hell with it』アートワーク

音楽メディアThe Sign Magazineが監修し、海外のポップミュージックの「今」を伝える、音楽カルチャー誌Rolling Stone Japanの人気連載企画POP RULES THE WORLD。ここにお届けするのは、2021年12月25日発売号の誌面に掲載された、ピンクパンサレスのブレイク以降、TikTokを主な現場として広がっている新たなドラムンベースの潮流についての記事。このムーヴメントを牽引するのはZ世代の女性が中心だというが、彼女たちは90年代UKクラブカルチャーから生まれたこの音楽を如何に再定義しているのか?

2021年の音楽シーンにおけるもっとも喜ばしい傾向のひとつは、Z世代が新たなムーブメントを次々と牽引し始めていることだろう。その一例として挙げられるのは、オリヴィア・ロドリゴ「good 4 u」以降にメインストリームでも顕在化したポップパンク/エモの隆盛。そしてもうひとつの注目したいムーブメントは、本稿のテーマであるドラムンベースの再定義だ。

この潮流の火付け役は英バース出身、若干20歳のピンクパンサレス。彼女は2020年末にTikTokアカウントを開設以降、投稿した曲が次々とバイラル。瞬く間に同世代のTikTokスターとなり、今年10月にリリースした初ミックステープ『to hell with it』は本国イギリスで20位、アメリカでもいきなりトップ100入りという快挙を成し遂げた。



そして現時点での彼女の代表曲「Break It Off」は、ドラムンベースのプロデューサーであるアダムFによる95年のフロアヒット「Circle」を大胆にサンプリング――というか、ほぼそのままのトラックにヴォーカルを乗せたもの。それ以外の曲もドラムンベースやUKガラージを下敷きにしたものばかりだ。

Pink Pantheress - Break It Off



このピンクパンサレスのバイラル以降、TikTokを主な発信地としてドラムンベース新世代が台頭している。マンチェスターのピリ&トミー・ヴィラーズ、ロンドン拠点のニア・アーカイヴス、シドニー出身のヴィエーレ・クラウドなど枚挙に暇がない。しかも彼らは皆20歳前後という若さだ。

piri & tommy villiers - soft spot



Vierre Cloud – moment



これらのアーティストの多くに共通する音楽的特徴は、ドラムンベースのマッシヴなビートを援用しながらも、フロア向けというよりはベッドルームミュージック的なドリーミーさがあること。そして囁くようなヴォーカルには、ピリの言葉を借りれば「ガーリー」なムードが漂っているということだ。

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