ポール・マッカトニーのベースプレイが生み出すグルーヴ、鳥居真道が徹底考察

「やはりモノで聞きたく…」

ファンクやソウルのリズムを取り入れたビートに、等身大で耳に引っかかる歌詞を載せて歌う4人組ロックバンド、トリプルファイヤーの音楽ブレインであるギタリスト・鳥居真道による連載「モヤモヤリズム考 − パンツの中の蟻を探して」。第30回はポール・マッカトニー特有のベースプレイをビートルの楽曲から考察する。

先だって配信が始まったビートルズのドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ:Get Back』を少しずつ観ています。『Let It Be SPECIAL EDITION』のリリースをきっかけに再燃したビートルズ熱がまだまだ続く格好となりました。

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ビートルズのような偉大なバンドに親近感を抱くなんておこがましい話ですが、たとえば眠いといってあくびをしながら演奏するメンバーたちを見ると、ファブ4も自分と同じ人間なのかと思わざるを得ず、身近に感じられたのでした。

印象的だったのは、演奏の合間に、ポール・マッカートニーがかつてのようにうまくいっていないバンドの現状を嘆く場面です。ブライアン・エプスタインの不在で僕らはバラバラになってしまった、とポールは言います。ほかにも、ジョージ・ハリソンの脱退宣言を受けて、ポールとジョン・レノンが二人きりで話し合っているのを花瓶に隠したマイクでこっそり録音した会話も衝撃的でした。ジョンはアレンジに関するポールのコントロールフリークぶりに苦言を呈しています。ここでのやり取りは非常に生々しく、リアリティ・ショーさながらです。

バンドを長続きさせる秘訣は核心に触れないことだとかねてより考えていました。もちろんこれは冗談です。そのようにして長らえたとして何か良いことがあるのだろうかと思わざるを得ません。『Get Back』では観ていて胃が痛くなるようなやり取りがなされているとはいえ、ビートルズをなんとかしたい一心で核心に触れつつぶつかり合うビートルズの姿にある種の感動を覚えたのでした。

緊張感が漂うなかにあって、ビリー・プレストンの登場は忘れがたいシーンのひとつです。暗雲立ち込めるなか、笑顔のプレストンがアンサンブルに加わったときの、「これこれこれ!」という顔をするメンバーたちに、観ているこちらまで嬉しくなってくるではないですか。

Rolling Stone Japan 編集部

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