「キング・クリムゾン最後の来日公演になるだろう」トニー・レヴィンが語るバンドの現在地

キング・クリムゾン、右から2人目がトニー・レヴィン(Photo by Dean Stockings)


新作アルバムはもう作らない?

—ライヴでの選曲の基準はあるのでしょうか。こういうアンサンブルやサウンドを試したいからこういう曲を持ってくる、という意図に基づいた選曲が行われることはあるのでしょうか。それとも、まず「この曲をやりたい」という判断があった上で、それを今の7人編成クリムゾン用にアレンジする、という方式が多いのでしょうか。

トニー:いい質問だね。セットリストは何種類もあって、その日のコンサートの朝になるまでどれを演奏するかは決まっていないんだ(その会場の前回の公演で演奏した曲とか、前日の公演で演奏した曲を参考にしながら、ロバート・フリップが朝食の席で決める)。だからどんな曲が出てくるか僕にも予想がつかないが、キング・クリムゾンにはレパートリーが豊富だから選びたい放題だね。


トニー・レヴィン(Photo by Claudia Hahn) 

—キング・クリムゾンの楽曲には、1つのフレーズを分解し複数人で担当するアレンジ(「Level Five」など)や、ポリリズミックなアンサンブルなど、演奏するのが非常に難しいものが多いですが、バンドとして特に気を付けている曲はありますか。また、トニー個人として、キング・クリムゾンの楽曲の中で特に好きなものは何でしょうか。

トニー:そうだな、後半の質問に関して言うと、僕自身はクリムゾンのショウでもどんなコンサートでも「特に好きな曲」というのはないんだ。中には、質問にもあったように、他よりも演奏するのが難しい曲もある。だけど比較的簡単な曲でも、かなりの集中力を要して、ノンストップで音楽に集中しなくちゃいけない。すると難しいことで知られている曲と同じくらい、コンサートで演奏すると盛り上がる場合があるんだ。今まで一緒にツアーした他のバンド以上に、このバンドでは全員がしっかり休養を取って体調を整え、音楽から求められる課題と向き合う必要がある。複雑な曲をミスなく演奏するだけじゃなく、その都度ユニークなものを作りださなくちゃいけないんだ。技術的に難しいというのもあるけれど、毎晩スペシャルなものに仕上げるのも同じくらい大変なんだよ。

—スタジオ録音の新しいアルバムはもう作らないという話がありますが、これは本当なのでしょうか。

トニー:スタジオアルバムの計画はないし、次回作が出る見込みもない(ただしキング・クリムゾンに関しては読めないな――なんてったって、僕は1985年に解散すると思っていたんだから!)。すべてはロバートの考え次第だ。この件について彼と話したことはないが、僕の知る限り、毎回ツアー前に十分リハーサルをして、公演では毎回「スタジオ収録」のクオリティで演奏して、公演内容を全部収録して、ショウのさなかに魔法が起きたら今後のリリースに取っておく。昔からそうしてきたわけじゃない。昔はスタジオアルバムを作って、アルバムをひっさげてツアーしてしていた――でも新しいやり方のほうが、大規模なアルバムがリリースされるまで待たせずに僕らの音楽をリスナーに届けられるし、僕らにもそのやり方が合っている。

—定期的に発表されているライヴアルバムはいずれも素晴らしい内容で、年を経るほどにクオリティが高くなり続けていると感じます。キング・クリムゾンのライヴはサウンドチェックやリハーサルも含め全て録音されていると聞きますが、そこから音源を選ぶ基準はありますか。また、その作業を担当するのは誰なのでしょうか。

トニー:どの音源がベストかを選ぶのはロバートと、マネージャーのデヴィッド・シングルトンだ。彼は全てのステージに立ち会っていて、バンドの歴史についても精通しているからね。


2021年の公演を収録したライヴアルバム

—キング・クリムゾンは全ての時期を通して様々な音楽ジャンルに大きな影響を与えてきました。70年代までのクリムゾンには、いわゆるプログレッシヴロックに留まらず、メタルやハードコアパンクの領域にも決定的な影響を受けたバンドが多いですし、あなたが参加した80年代以降の作品群も、ポストロックやマスロックといったジャンルの主要なインスピレーション源になっています。そして昨今も、ブラック・ミディをはじめ多くのバンドがクリムゾンからの影響を公言していますし、キング・クリムゾンの存在感はここにきて更に高まり続けているように思われます。こうした状況をクリムゾンのメンバーは意識されていますか? また、2001年に開催されたトゥールとのツアーのように、ライヴでの共演やコラボレーションに関するオファーや予定はありますか?

トニー:そうだね、他のミュージシャンから「あなたの音楽に影響を受けました」と言ってもらえるのは光栄だ。もちろん僕自身も他のプレイヤーから影響を受けている(キング・クリムゾンの歴代ベーシストも含めてね!)。トゥールとは一緒にツアーする計画があったんだが、2020年にツアーでできる選択肢が変わってしまった。それでツアーを再開できるまで待って、それからツアー開催地の選定をしなくちゃならなかったんだ(全米ツアーを終えて、今度は日本だ)。

—キング・クリムゾンは、SpotifyやApple Musicのようなサブスクリプション・サービスで一度は音源を公開したものの、その殆どの配信を停止し、その後にYouTubeでは大部分を公開し、現在もその状況が続いています。このような判断に至った主な理由はどんなものなのでしょうか。

トニー:これも決めるのはロバートとマネージメントだ。僕は関わっていないし、このことについては何も知らない。 

Translated by Akiko Kato

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