ザ・ビートルズ解散は必然だったのか? 崩壊寸前のバンドを巡るストーリー

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ドキュメンタリー作品『ザ・ビートルズ:Get Back』の公開を記念して、米ローリングストーン誌のカバーストーリーを完全翻訳。ここでは後編をお届けする。

【前編を読む】ザ・ビートルズ解散劇の真実 メンバー4人の証言と映画『Get Back』が伝える新発見


『ザ・ビートルズ:Get Back』
PART1:11/25(木)/ PART2:11/26(金)/ PART3:11/27(土) 各日17:00より配信スタート
※ディズニープラス加入者の方は配信スタート以降、いつでも好きな時間に視聴可能

アレン・クラインがもたらした絶望

ブライアン・エプスタインの死後の混乱に乗じて、厚かましい4人のニューヨーカーがビートルズに接近してきた。一人目は、ヨーコ・オノという名前の東京生まれのアヴァンギャルド・アーティスト。それから写真家のリンダ・イーストマン、音楽ビジネスのやり手として知られたアレン・クライン、そして風変わりなプロデューサーのフィル・スペクターの4人だ。彼らはそれぞれ個性的で、自信満々だった。4人はビートルズというバンドに恐れをなすこともなく、英国流のやり方に縛られることもなかった。彼らの強引さに惹かれたビートルズは、4人を信頼するようになった。彼らはビートルズのメンバー内に大きな影響を及ぼすようになる。クラインは4人の中で最も名を知られていない人物だが、バンドの最期に一番大きく関わったのは間違いない。

クラインは、サム・クックらアーティストとのビジネス経験を積んでいたものの、悪い評判も立っていた。彼はローリング・ストーンズを手玉に取り、楽曲の権利を持って立ち去った。しかしミック・ジャガーは、朋友であるビートルズを待ち受ける運命には無関心だったためか、特に警告を発することはなかった。ポールによると、ミックは「君らがいいと思うんだったら、彼で問題ないんじゃないか」と言い、彼らの運命を決定付けたという。「そもそも僕らを引き合わせたのはミックだ」とジョンは、1970年にローリングストーン誌のヤン・ウェナーに語っている。「クラインについての酷い噂は耳にしていた。でもストーンズが彼との関係を続けているし、誰も何も言っていなかったので、噂が本当かどうか見極められなかった。ミックは何かあれば黙っているようなタイプではないので、僕としては、クラインで問題ないだろうと考え始めた」


手前からアレン・クライン、ジョン・レノン、オノ・ヨーコ(1969年)。ビジネス界で悪名高かったクラインはすぐにジョンの心をつかんだが、ポールは「彼では力不足だ」と慎重だった。(Photo by STARSTOCK/Photoshot)

ジョンとヨーコは、クラインとドーチェスター・ホテルで会った。常に自分を導いてくれる人間を求めるジョンは、すぐに彼を気に入った。「直接会ったことがなくても自分のことをよく理解してくれている人間には、自分を任せられるはずだ」とジョンは言う。ジョンがいとも簡単に自分の口車に乗り、ライフワークを任せる契約に署名したことで、むしろクラインの方が驚いたに違いない。クラインにとっては、ネヴィル・チェンバレン(訳註:英国の元首相)以来の、英国の容易な交渉相手だった。クラインが契約を勝ち取ったことで、バンドは絶望的な状況に陥った。

ポールだけは当初からクラインを信用していなかった。「僕はアレン・クラインと契約を結ばなかった。彼を好きになれなかったし、僕のビジネスを任せられる人間ではないと思ったからね。でも他の3人は彼を気に入った」とポールはローリングストーン誌に語った。ポールとしては、義理の父親であるリー・イーストマンをマネージャーにしたかったが、他の3人に拒否された。ジョンは、「彼はわざとそっけなくしている。まるで子どもだ」と協調的でないポールに激怒した。ポールが抱いた疑惑は、70年代に入ってすぐに立証されることとなる。メンバーはクラインを相手取ってそれぞれ訴訟を起こし、彼は脱税の罪で服役した。「最終的に僕らは、アレン・クラインを排除することになった」とリンゴは映画『アンソロジー』の中で語っている。「ちょっとしたお金はかかったけれどね」

しかしクラインは、ビートルズの間に入り込んでいた。1967年夏、メンバーはマハリシと出会う。2年後、彼らは弁護士や会計士と多くの時間を過ごすこととなった。レノンは1970年にローリングストーン誌に語っている。「ポールが、“もうビジネスの話はしたくないから、弁護士と話してくれ”と言うようになった。つまり“わざと長引かせて訴えて、お前を潰してやる”ということさ」

Translated by Smokva Tokyo

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