ザ・ビートルズ解散劇の裏側 メンバー4人の証言と映画『Get Back』が伝える新発見

Photo by Ethan A. Russell/ (C) Apple Corps Ltd.


「彼らは全てをやり尽くしていた」

『Sgt. Pepper’s Lonely Hearts Club Band』や『Abbey Road』、そして通称『ホワイト・アルバム』と呼ばれる『The Beatles』の50周年記念エディションをプロデュースしたジャイルズ・マーティンは、ビートルズの作品を全部揃えないと気が済まない熱狂的なファンを、「靴下にサンダル履きのギーク」と呼んだ。ジャクソン監督は、自分も正にその集団の一人だったと認める。「70年代後半からブートレッグ版を集め始めた。ゲット・バック・セッションのブートレッグ版は6種類持っている。アルバム9枚分の内容だった。今でも全部ある」という。しかし今回彼が見た未公開映像の中のストーリーは、ブートレッグ版を聴いた彼の想像を遥かに超えていた。「個人的なファン目線で56時間の映像を確認した。彼ら自身は何か新しいことをしたいと思っていたが、既に全てをやり尽くしてしまっていたように感じた」とジャクソンは言う。「彼らは同じことの繰り返しを嫌っていた。“Sgt. Pepper’s パートII”を作る気などなかったんだ。“キャヴァーン・クラブのバンドに戻れたら……”とメンバーが話すシーンがある。彼らが演奏したシェイ・スタジアムより大きなスタジアムは存在しない。彼らは複雑なアルバムを作った。シンプルなアルバムも作った。映像を見ると、本当は解散などしたくなかったのだと強く感じる。彼らは前進し続けるバンドだったが、もう目指すべき場所がなかったのだ」

映画『レット・イット・ビー』を監督したマイケル・リンゼイ=ホッグが、リハーサル風景を1本の映画にしたらどうか、とバンドに初めて提案するシーンがある。メンバーは(当然)技術的に問題がないかなどと、一斉に相談し始める。映像はもともとテレビ番組用の16mmで撮影されていたため、映画用の35mmに拡大する必要があった。だから『レット・イット・ビー』の映像は、お粗末に見える(『Get Back』では技術的な修復により、ビートルズがビートルズらしく映っている)。ポールは、映画館向けにするには画像が粗すぎる、と異議を唱えた。ジョージはただ頭を振る。「受け入れられない奴はバカってことさ。」

4人は心の底で、尊大な傲慢さを共有していた。ある意味で傲慢さがあったからこそ、好調な時も不調な時も彼らは結束できていたと言える。彼らのような傲慢さがなければ、『Get Back』のように、見事なまでにばかばかしいアドベンチャーなどあり得ない。

『Rubber Soul』『Revolver』『Sgt. Pepper’s』で世界を圧倒した当時のビートルズは、共同で作品を作り出すエネルギーに満ちあふれていた。『Sgt. Pepper’s』は、世界に対する4人の最後の抵抗だった。同作品のリリース直後に、最初のマネージャーだったブライアン・エプスタインがこの世を去る。エプスタインが亡くなる直前まで、4人は常に行動を共にするソウルメイトで、オフの時も一緒だった。「僕らを理解できる人はほとんどいない」とジョンは、1967年にハンター・デイヴィズ著のバイオグラフィーの中で語っている。「外の人間とは全くコミュニケーションを取らない。今や周りには知っている人間しかいないから、他人とやり取りする必要がないのさ。僕らはお互いを理解し合っているから、他のことは気にしない」とジョンは言う。『Revolver』リリース後に最後のツアーを終えた彼らは、3カ月間の休みを取ろうとした。しかしすぐにお互いが恋しくなり、「メンバーほど気の合う人間は他にいなかった」とジョンは感じた。

エプスタインはビートルズ最大のファンで、彼らのチアリーダー役だった。エプスタインの死は、ビートルズに大きな変化をもたらした。「エプスタインが亡くなってから、僕らはとてもネガティブになった」とポールは、ゲット・バック・セッションの中で述べている。「僕ら全員がビートルズというグループに対して幻滅してしまったのさ」

Translated by Smokva Tokyo

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