LiSAが語る、「明け星 / 白銀」の創作プロセス、いま自分が出すべき答え

2021年を振り返って

—その「白銀」は、コーラスの部分が特徴的な曲ですよね。どういうイメージでつくったんでしょうか?

LiSA:「白銀」は、それこそ本当に梶浦さんの指揮にお任せしていて。というのも、最初に打ち合わせしたときに、少し寂しいバラード寄りの、訥々と歌っていくような楽曲が似合うんじゃないかと梶浦さんと話していたんです。でも梶浦さんはアニメの制作の皆さんと一緒に楽曲もつくられていたので、アニメ制作の皆さんが思い描くものとして、やっぱり次の話に繋がっていく楽曲を制作したいということを伺って。それで梶浦さんが疾走感のある、次の回にきちんと希望を置いて進んでいけるような楽曲をつくってくださいました。



—「白銀」に関しては、「明け星」で言う“希望の裏側”の表現のようなイメージはあったんですか?

LiSA:それでいうと、「明け星」が“希望の裏側”だとすると、「白銀」はシンプルに“希望”です。というのも、「炎」を制作したときに、梶浦さんが最初に歌詞を書いてくださったんですけど、そこに私が、自分の思い入れも含めて手を加えさせてもらって歌詞を共作にさせていただきました。「炎」の歌詞の中でも“希望の裏側”を感じる部分は梶浦さんなんです。私は、希望を希望として受け止めて生きていかないと生きていけないタイプで。梶浦さんは苦しくても楽しくても堂々と微笑んで立っているような方で、私は苦しくてもニカッて笑っているタイプの人間で、表現方法がまた違うところもあって。「明け星」は梶浦さんのことをすごく感じるって皆さんおっしゃるんですけど、それはきっと、梶浦さんの表現する“希望の裏側”の成分がすごく大きいからだなって思います。

—なるほど。

LiSA:対して「白銀」は、自分の色を感じる楽曲だと私は思っていて。それは、この曲がどちらかというと希望に向いている楽曲だからなのではないかなと思っています。さっき梶浦さんは歌い手にすごく寄り添ってくださる方だと言ったんですけど、二番の“欲しがって欲張って 未来の胸ぐら掴んで捩じ伏せろよ”ってフレーズは、作品の中でいうと炭治郎の想いでもありますし、「LiSAさんだから胸ぐら掴むんだよ」っておっしゃってました(笑)。

ーアハハ。

LiSA:梶浦さんは胸ぐらは掴まないので(笑)。でも多分、歌う人がLiSAだってことも含めて、希望に託してくれた。ここだけでなく、私の表現としても私らしいというか。前を向きたい気持ちを綴ってくださってるなって思います。誰かから託してもらう、とか、誰かに信じてもらうって。それがときに希望にもなり逆の想いとして受け取る場合もあるということを、梶浦さんがおっしゃっていて、なるほどなぁと思いました。その言葉を聞いて「炎」をつくったときに感じていたことが言語化されたような気がしたし、今回の楽曲にもそれを感じましたね。

—最後に、2021年も残すところあと1カ月ちょっとですが、LiSAさんにとってはどんな1年でしたか?

LiSA:新たな一歩だった気がします。すごく大きな、ジャンプした一歩ではないかもしれないけど、でも、ちゃんとみんなで踏み出せた2021年。一度できなくなったことを取り返して、また進むための計画を立てて。大きさはそれぞれあれど、私にとっては一歩踏み出した1年だったなと思います。

—アメリカの音楽シーンではLiSAさんの好きなポップパンクがリバイバルした1年でしたよね。

LiSA:そうですよね!  私、たまにポップパンクやエモを無性に聴きたくなるときがあって、そんなときはサブスクをチェックするんですけど、「今よく聴かれている曲」ランキングには全然入ってないんですよ。だから、そういう場合はプレイリストを探すんですけど、たまたま「ROCK IS NOT DEAD」ってプレイリストを見つけて。その表現が気に入ってしまって。いろんなことを受け入れた上で、ロックは死んでないぞ!ってサブスクの中で言ってるそのプレイリストがすごく好きだなと思いました(笑)。

—(笑)そうなんですね。先日LiSAさんの好きなブリング・ミー・ザ・ホライズンのVoのオリヴァー(・サイクス)にインタビューしたとき、こう語ってくれたんですよ。「この2年間のパンデミックの間、僕は自分自身に問いかけてたんだよ。“自分は何者なのか?”って。この問いは長い間ずっと自分の内面に向けていたものでもある。僕はロック・バンドにいるし、それが僕という人間だ。でも同時に、そこから逃れたい、ロック・バンドにいることが恥ずかしいと思ってたんだ。でもパンデミックを経て自分はロック・バンドにいて、自分はロックスターである、それが自分という人間なんだと気づいたんだ」って。

LiSA:なるほど。

—そういう己に問いかけるようなことは、このコロナ禍でLiSAさんもありましたか?

LiSA:ありました。ライブが思うように開催できなかった年でしたし、私にとって10周年ってこともあって、一つ締めくくりの年でもあったので。今までの自分とこれからの自分についてはすごく考えるようになりました。それでいうと今私はまだ、オリヴァーみたいに自分がどうあるべきかって答えは見つかっていないです。でも、まだ答えが見つかっていない中でも、今自分が出すべき答えは、とりあえず今は走ってみるってこと。そうやっていつも答えを見つけてきたというか、いつの間にかわかってきたことの方が多かった気がするので。走りながら見つけていくことができるといいなと思ってます。三十代になるときもそうだったんですけど、三十代になることに構えて、目標を持たなきゃいけない、ヴィジョンを描かなきゃいけないって強迫観念がすごくあったし、どういう自分にならなきゃいけないみたいなことも考えていたんですけど、でも、走っていて見つけられることもきっとあるだろうなって思いました。なので目の前に来たものに対して誠実に向かっていくこと。そこでその人とどういうふうにセッションして戦っていくか。その中で誠実に向き合っていった先に何かあるんじゃないかなって、私で言う“希望”があります。

—クリエイティブなことをする理由って、そういう希望や未来を純粋に見たいからってこともきっとありますよね。

LiSA:はい。それもありますし、自分が素直につくったものとか嘘なく注いだものが評価されたとき、すごくうれしいんですよね。嘘を詰め込んだものを受け入れてもらったとしたら、一生自信持てないし、次に何をつくったらいいかもわからなくなるような気がします。だから自分の活動の中で一個だけです。嘘をつかないってことだけ。自分の気持ちに嘘をつかない、ってことだけ大切にしてます。

<INFORMATION>

「明け星 / 白銀」
LiSA
SACRA MUSIC
発売中

初回仕様限定盤[CD] VVCL-1943 ¥1,320(税込)
期間生産限定盤[CD+DVD] VVCL-1944~1945 ¥1,760(税込)
☆期間生産限定盤 DVD 内容:テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編 ノンクレジットOP・ED映像収録

収録内容
M1:明け星
M2:白銀
M3:明け星 -Instrumental-
M4:白銀 -Instrumental-
M5:明け星 -TV ver.-
M6:白銀 -TV ver.-
☆「初回仕様限定盤(通常盤)」と「期間生産限定盤」のCD収録楽曲内容は同じとなります。
☆期間生産限定盤:テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編 ノンクレジットOP・ED映像収録DVD付

<作品情報>
■テレビアニメ「鬼滅の刃」無限列車編
原作:吾峠呼世晴(集英社ジャンプ コミックス刊)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン:松島晃
アニメーション制作:ufotable
テレビアニメ「無限列車編」公式サイト
https://kimetsu.com/anime/mugenresshahen_tv
公式Twitter
https://twitter.com/kimetsu_off

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