PassCode南菜生が語る、「ラウドな音楽性と狂騒感」を求める理由

「シャウトは打楽器っぽい」

ーそれこそメジャー1stアルバムの『ZENITH』(2017年)は、これ一発でグループのイメージも音楽的な立ち位置も作ってやるぞという気概が強かったと思うし、必然的にラウドの要素が強かった。で、『CLARITY』(2019年)や『STRIVE』(2020年)と経ていく中で、音楽の極端さじゃなく個々のキャラクターを聴かせる楽曲も幅広く取り入れられるようになってきましたよね。

そうですね。ラウドロックが武器である一方、たとえば「ATLAS」や「Ray」みたいに、シャウトが表に出てこない楽曲でもPassCodeらしさを感じられる曲が増えてきて。個々のキャラクターが出る楽曲といってもらいましたけど、いろんな楽曲を吸収していく中で「ラウドをやることがPassCode」っていう発想から「全員の要素が入ることがPassCode」っていう考え方に変化してこられたんだと思います。むしろシャウトをひとつの楽器のように捉えるようになってきたし、有馬もよく「シャウトは打楽器っぽい」って言うんですよ。





ーそうですね。急激な展開を接着するフィルっぽい機能を持っていたり、楽曲のビート感を加速させたり、自由自在な楽器だと思う。

そうなんです。それをどう使うのか、ひとつの楽器としてどう入れていくのかをPassCodeとして考えていけば、もっと自由にやっていけるんじゃないかと思ってますね。

ーそして、そもそも南さん自身もFear, and Loathing in Las Vegasが好きだったとおっしゃいましたが、PassCodeの楽曲にも似た要素が色濃く入っていると思うんですね。ベガスは一概にラウドと括られることが多いですけど、実はレイヴミュージックやトランスの狂騒感が軸になっていて、そこに絶叫やポストハードコアを足すことで暴発感を増強して導入している仕組みの音楽だと思うし、そこがPassCodeの音楽とも共通していると思っていて。PassCodeも「ラウド」である以上にダンスミュージックの発想が軸になっているし、それが、ラウドやポストハードコアに馴染みのない人にもリーチできている理由のような気がして。

私がベガスを好きになったのは、ライブが楽しかったからなんですよ。ベガスのメロディのキャッチーさだったり、楽曲で踊れるフックの入れ方だったりが好きだったんでしょうね。逆に言えば、どれだけ重たい音楽だとしても、流し聴きした時に一発で耳に残るメロディがあるかどうかが大事だと思ってきて。だから本当のメタル好き、本当のラウド好きからしたら怒られるかもしれないんですけど、ラウドさ以上にキャッチーなメロディを持っているロックが自分の根っこにあるものなんですよね。そういう意味で言っても、ラウドに限らない楽曲が増えつつ、有馬が加入してシャウトにヴァリエーションが出た今の状態は凄く自由でいいバランスのような気がしてます。

ー個々の特徴が混ざることでPassCodeが自由になっていくとおっしゃる点で伺いたいんですが、南さんご自身はどんな武器を磨いてきた自覚がありますか?

うーん……言葉、ですかね?

ー言葉?

振り返ると、PassCodeを始めたのは高校2年生で、よく行っていたライブハウスで今の社長さんや元々のメンバーと知り合ったのがキッカケだったんです。社長さんが「アイドルグループを作ったんですけど、すぐにメンバーが抜けることになってしまった」と。このままだとメンバーがいなくて続けられなくなるから、入ってくれないか?っていうお話をいただいてPassCodeに入ることになったんですね。だから元々はこれが仕事になるとも思っていなかったし、表現が何かということも全然考えてなかったんです。で、最初はアイドルが自分にシックリこなかったのも事実なんですよ(笑)。自分で曲を作らないと自分の言葉に説得力がないんじゃないか?みたいなことを考えてしまって。でも、当時のメンバーが脱退することになった時に、「PassCodeは終わった」って言われたことがあって。やっぱりメンバーが抜けるというのはマイナスなことのほうが多いのもわかっていたし、そう言われるのはしょうがないとは思ってたんですけど。でも、よくも悪くも「女性版Las Vegas」って呼ばれるようになったり、そうしてサウンドの印象が浸透したり、だんだん人に伝わってキャパが大きくなってきたところだったので、「あいつらは終わった」と言われた時に凄く悔しくて。それまではオトナの人が決めたレール上を歩いているだけだったけど、ステージに立つ以上は「自分達でなければいけない理由」を作るべきだと思うようになったんです。それが2015年の秋頃かな? その頃によく聴いていたのがSUPER BEAVERで、ビーバーの音楽に凄く励まされて。


南菜生(Photo by Shingo Tamai)

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