MONOEYES、パンクソングの無限性を物語った日本武道館の夜

デジャブが何度も起こる。スコット、細美、戸高が同時に高々とジャンプする瞬間。あんまり同じシーンがありすぎて私は途中から大笑いしていた。待ちに待った「ザ・武道感」のMONOEYESと、ずっと変わらない「ディス・イズ・ライヴハウス」のMONOEYES。継続とは、どちらも手に入れられる豊かさのこと。小バコで大汗かきながら大声で騒いでも、伝統ある武道館の客席でゆったり見ても、同じだけ心が沸き立っていく。どちらもあることがコロナ禍の今は最大の贅沢だ。

スコットが細美のマイクを使い誇らしげにセンターに立った「Roxette」。一度しっとり聴かせた後に後半戦の火蓋を切るきっかけとなった「グラニート」。昨年の配信ライブ同様に、パンダの被り物(の下の素顔にもパンダメイク!)をしたTOSHI-LOWが乱入した「Two Little Fishes」。印象に残るシーンは数えきれないほどあったが、私の脳裏に一番焼きついたのはラスト直前の「My Instant Song」だった。


(photo by Maki Ishii)

「My Instant Song」は、4人が動き出してすぐの時期、細美の脳内に天啓のごとくに流れ出した曲だ。結果MONOEYESのデビュー曲となり、すぐさま全国ツアーがスタート、旅のはじまりの歌となった。そこから6年、武道館でイントロが鳴った瞬間、アリーナ、一階、二階席の全員が「自分の歌だ!」という顔になった。細美の曲でもバンドの曲でもなく、まさに「俺の歌、私の歌」といった受け止め方。ここまで共有され、かけがえのないものとして愛でられてきたのかと、4人がヴァンに乗って走り続けた時間の長さを思ってしまう。

〈暗がりにいると感じるときは ただ歌を歌うんだ 即興の歌さ〉ストレートなポップパンクに乗った歌詞の和訳である。結成当時、東北のハコを回るためのバンドとして始まったMONOEYESは、難しいこと一切抜き、中高生がみんなで騒げる賑やかしの歌があればいいと、ごくシンプルな目的を掲げてツアーに奔走した。もちろん歌は一瞬でキッズに共有された。つまり目的はわりと早くに達成されたわけだが、さらなる〈Sing A Song〉を何百回と繰り返していれば、武道館で何千人と祝福できる日が来るのだ。会場全体を照らす虹色のライトは夢みたいに美しい。まばゆく光る七色、それに照らされるみんなの笑顔が、MONOEYESのパンクソングの無限性を物語っていた。

photo by Maki Ishii

text by 石井恵梨子



<公演情報>

「Between the Black and Gray Tour 2021」

2021年11月2日(火)東京・日本武道館
1. Fall Out
2. Bygone
3. Run Run
4. Free Throw
5. Interstate 46
6. Cold Reaction
7. Like We’ve Never Lost
8. Roxette
9. Get Up
10. Iridescent Light
11. Nothing
12. グラニート
13. When I Was A King
14. Somewhere On Fullerton
15. 明日公園で
16. Borders & Walls
17. Two Little Fishes
18. Outer Rim
19. My Instant Song
20. リザードマン
EN1. 3,2,1 Go
EN2. 彼は誰の夢
WEN. Remember Me
■Apple Music、Spotify、LINE MUSIC セットリストプレイリストURL:https://lnk.to/BtBaGT2021

MONOEYES Official Site:www.monoeyes.net

Rolling Stone Japan 編集部

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