威嚇・恐喝は日常茶飯事、ギャングと職員の「癒着」が明るみに 米刑務所

2019年8月10日、米ニューヨーク州メトロポリタン矯正センターのフェンス(Photo by Bebeto Matthews/AP)

米ニューヨーク市マンハッタン南部のメトロポリタン矯正センターは、性的搾取で起訴された富豪、ジェフリー・エプスタイン被告が自殺した場所としても知られる。様々なセキュリティレベルの男女の囚人を収容している拘留施設だが、環境劣悪で、矯正官が受刑者に虐待を加えたり、内部で汚職が蔓延したりするなど問題が多いことでも知られる。

【写真】精神崩壊を招く「恐怖の独房」

そのため司法省は8月に同刑務所の閉鎖を発表し、10月に受刑囚を移送。ニューヨーク南地区連邦検事は現地時間11月4日、忌まわしい同センターの最後にして極めつけのスキャンダルを暴露する起訴状を公開した。関係者の犯罪歴を踏まえた上で起訴状をじっくり読んだ結果、Blood Hound BrimsやCrips一派といったニューヨークシティ最恐のギャング団と施設職員との癒着が明るみになった。

3人の看守は高層建築の刑務所に禁制品を持ち込む計画に加担し、8人の受刑囚に便宜を図ったとして起訴された。11の呼び名を持つこれら受刑囚は、少なくとも6つのギャングのメンバーだ。そのうちの1人、Nine Trey Gangsta Bloodsのアンソニー・“ハーヴ”・エリソンは、ラッパーの6ix9ineを誘拐して強盗を働いたなどの罪で懲役24年の刑期を務めている。

22ページの起訴状によれば、犯罪計画に関与した刑務所職員は賄賂を受け取って、麻薬や酒、タバコ、携帯電話など様々な物品を12階建ての収容所に持ち込ませていた。1975年に開所し、連邦刑務所局が運営する同センターは、主に裁判や量刑判決を待つ受刑囚の拘留用に使われていたが、近年では過密な収容率と不衛生な環境、そしてスキャンダルの舞台となっていた。

ここは世界でも悪名高き受刑囚が収監されていた施設でもある。ちなみにエプスタインは、監視そっちのけで居眠りやインターネットをしていた看守の不注意により、まんまと自ら命を絶った。メキシコの麻薬王エル・チャポことホアキン・グズマンは刑務所内の不衛生な環境に反発し、同センターでの拘留を「身体的、情緒的、精神的拷問」になぞらえた。

起訴状によれば、持ち込み計画は2019年10月ごろから始まって今年1月まで続いた。3人の刑務所職員は、オキシコドン、ザナックス、喫煙型合成カンナビノイドK2、酒、煙草、携帯電話、アクセサリーの持ち込みに手を貸していた模様。これら禁制品は拘留中の受刑囚8人の手に渡ったとみられる。彼らは「キンゴ」「レル」「ブランド」「ドンP」「チノ」「ジュニア」など、TVドラマ『THE WIRE/ザ・ワイヤー』からそっくりそのまま取った別称で呼ばれていた。

起訴状には受刑囚の所属するギャングは列挙されていないが、すでに連邦当局はニューヨークシティでもっとも恐れられるギャングとの関連性を突き止めている。

Blood Hound Brims:連邦当局の表現によれば、「ストリートと刑務所で幅を利かせるギャング、Bloodsの中で最も凶悪かつ急速に成長している一派」

Davidson Avenue DTO(麻薬取引組織):連邦当局いわく、「全米に展開するストリートギャングCrips」から分かれた一派

Boss Crew:連邦当局の表現によれば、「Brooklynの麻薬取引組織」

Stevenson Commons Crews:連邦当局によれば、ブロンクスを拠点とする「恐喝組織」

Hot Boys:連邦当局の表現によれば、アッパーマンハッタンを拠点とする「強盗団」

Translated by Akiko Kato

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