Spotifyは日本に何をもたらした? TaiTan×玉置周啓×柴那典が語る5年間の地殻変動

写真左から、柴那典、TaiTan、玉置周啓(Photo by Kana Tarumi)


ポッドキャストに感じる可能性

─ところで今、玉置さんとTaiTanさんはポッドキャスト番組『奇奇怪怪明解事典』をやっていますが、始めたきっかけは?

TaiTan:確か去年の5月くらいかな、アメリカで1ヶ月ツアーをやる予定が全部飛んでしまって。国内のライブも何もない状態が続き、楽曲のリリースも全て白紙になってしまったんです。しんどいな、と思いつつ音楽以外の表現を探していたのが一つ軸としてあるのと、当時SNSでは何を言っても燃やされる地獄のような状況だったので、そこから切り離された場所で好き勝手に話したいという気持ちがありました。そんな時にポッドキャストの存在を知って、Spotifyが提供しているAnchorというアプリを使えば誰でも簡単に配信できるというので、だったらやってみようかなと。(玉置)周啓くんとはまだそんなに面識なかったんですけど、LINEして「やらないか」と誘ったら「それ、言おうと思ってた」と返ってきた(笑)。

玉置:僕もTaiTanと動機は同じで、とりあえず息を吐く場所がないまま情報や苦悩を吸い込み続けている時期が続き、愚痴じゃなくてもいいからとにかく吐き出す場所が欲しいなと。そう思っていた時にTaiTanから誘いがあり、一人でやるつもりだったけど二人の方が楽しそうだなと思って一緒にやることにしました。



─初対面に近い玉置さんを、TaiTanさんはなぜ誘ったのでしょう。

TaiTan:一、二度会って話したときの空気感ですかね。話し込んだことはなかったけど、「この人間は使っている言語感覚が似ているな」という読みがあったんです(笑)。興味や関心ごとの範囲が近いというよりは、言語感覚や世界認識の仕方が似ているところが面白そうだなと。それは僕にとって珍しい存在でもありましたし。

─コロナ禍でスタートして、すでに80回を超えているんですよね。

TaiTan:最初はリスナーもいないまま更新している状態が半年くらいあったんですけど、それでも続けていたら「JAPAN PODCAST AWARDSで『Spotify NEXTクリエイター賞』に選ばれました」と連絡が来て。そこからリスナーもグッと増えていきましたし、こちらもモチベーションもそれで上がりましたね。下手なこと言えないなあと思って、ちゃんと準備もするようにもなりました。


Photo by Kana Tarumi

─ポッドキャストを始めたことで、ご自身に何か変化もありましたか?

TaiTan:それまで恒常的に考えていたことを、ラップ以外の形でアウトプットするようになったわけで、あらゆることが「喋ること」で昇華されちゃう部分もあって、「あんまりネガティブなこと考えなくてもいいや」というマインドセットにはなってきたような気はしていますね。

玉置:仕事でもありつつ、話し相手ができたことはすごく大きいです。ただ、普段感じていた不満みたいなものが、ここで昇華してしまうので曲が作りづらくなりました(笑)。やっぱりものを作る時にはネガティブというか、湧き立つ思いみたいなものがあった方がいいんですよ。

TaiTan:そこがは不思議なんだよね。僕はラップをするのもポッドキャストで話すのも、アウトプットの仕方が違うくらいであんま変わんなくて。例えば「マジでムカつくわ」みたいなことがあった時に「ラップにするならこう」「ポッドキャストで周啓くんと話すならこんな感じ」というふうに分けて考えているので「(一方が)枯渇する」みたいな感覚はあまりないかも。

玉置:例えば「社会はこうである」みたいなことを、賢くもないくせに語りたがる時期みたいなものは終わってきているんでしょうね。こうやって二人で話すことが増えたから、曲でわざわざそんなことやらなくてもいいかなという感覚になってきているというか。音楽という形でしか表現し得ない情景や機微の方に興味が湧いてきているという意味では、大きな影響があったなと思います。

柴:僕は『奇奇怪怪明解事典』をたまに聴いているんですけど、いい意味で「聞き流せる」というか。車の運転や散歩をしながら他のことを考えて、また耳を傾けても全然問題なく内容についていけるところがいいなと思うんですよ(笑)。

TaiTan:それ、僕はすごく意識しているポイントです。ポッドキャストって、情報密度が高くて「有益」なコンテンツが多いんですよね。僕らはそこまで教養的深さがないというのも当然あるんですけど、自分がやるならもうちょっと情感に寄ったものというか。人と人が喋っていること、そのものが実は快楽なんだという、どちらかといえば音楽的な番組にしたかったんです。キング・クリムゾンの「It’s Only Talk」じゃないけど、「喋ってるだけでおもろくね?」という。

柴:なるほどね。スーパー銭湯とか行って、若者集団が喋っているのを側で聞いている感じ……気になるワードとか出てくると、つい耳を傾けちゃう感覚に近いのかもしれない(笑)。

玉置:それって、さっきTaiTanが言っていた「言語感覚が似ている」というのが大きいのかもしれないですね。その若者集団の中に、会話が噛み合っていなかったり、一々突っかかっているやつがいたりしたら聞いてられないじゃないですか(笑)。


Photo by Kana Tarumi

─柴さんも『三原勇希 × 田中宗一郎 POP LIFE: The Podcast』などにゲスト出演するなど、ポッドキャストとも縁が深いですよね。

柴:例えば三原さんの番組などにゲストとして呼ばれて出るとなると、もちろん楽しいんですが、肩肘張って喋ってるので、後から聞き返した時に「なんか俺、頑張ってるなあ」みたいに思うことが多くて(笑)。「雑談がしたいな」という気持ちはずっとありますね。雑談を定期的にアウトプットしていく秘訣を二人から学びたいです。

あと、亀田さんと配信した『松本隆トリビュートを2倍楽しむMusic + Talk』も楽しかったですね。『松本隆トリビュート』をプロデュースした亀田さんに全曲解説をしてもらったのですが、こちらはラジオのスタジオを使ってしっかり語っていただくという、普段僕がやっているインタビュー仕事に近い感覚でできたので。




─『松本隆トリビュートを2倍楽しむMusic + Talk』でも利用しているSpotifyの新たなサービス「Music + Talk」は、トークの途中で曲が流せるところがポイントです。Spotifyに登録されている楽曲ならば、どれも著作権フリーでラジオのように流すことができるようになっているのは画期的ですよね。

柴:僕、「Music + Talk」を使ってやってみたいことがあるんですよ。コロナになって、リモートでの取材が増えたことで減ってしまったことの一つが、取材の帰り道やライブが始まる前にロビーなどで編集者としていた「最近、何を聴いた?」トークだなと。あれが実は僕、この仕事をやっている中での楽しみの一つだったんだなと、コロナになって気がついたんです。きっとミュージシャンも楽屋とかでしていた雑談だと思うんだけど、あれを「Music + Talk」でやったら面白いんじゃないかなと個人的には思っています。

TaiTan:この間、Dos Monosのアルバムを出したタイミングで、自分たちで全曲解説するという番組を「Music + Talk」でやってみたんですよ。曲を流しつつ「これは、こういう背景があって」みたいなことを話してみたんですけど、ファンもすごく喜んでくれて。確か折坂悠太くんとかもやっていたと思うけど、もっといろんなアーティストがやった方がいいんじゃないかな。

玉置:確かに、何かを考える時に質問されてそれに答える方がいい場合と、問わず語りの方の方がいい場合がありますよね。そういう意味ではMONO NO AWAREでもやってみたい。別に楽曲のテーマやコンセプトをがっつり語らなくても、レコーディングの思い出話程度でもアーティスト本人が語って、喜ばないファンはいないんじゃないかな。




Photo by Kana Tarumi

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