Spotifyは日本に何をもたらした? TaiTan×玉置周啓×柴那典が語る5年間の地殻変動

写真左から、柴那典、TaiTan、玉置周啓(Photo by Kana Tarumi)


Spotifyがもたらした「変化」と「恩恵」

─では、実際にSpotifyが発表した過去5年間のデータを見ながらいろいろ語り合ってもらおうと思います。まず、「過去5年に国内で最も再生された楽曲」のランキングを見て柴さんはどう思われますか?

柴:歌番組や雑誌、新聞などのメディアで「CD何百万枚ヒット!」みたいな言われ方が、だんだんしなくなっていったのもこの5年間だったなと思います。それこそあいみょんの「マリーゴールド」(2018年)も、初動では大して売れなかったのですが(オリコンチャート初登場12位)、振り返ってみたらその年を代表する楽曲になっていたわけで。Official髭男dismの「Pretender」(2019年)は、リリースがちょうど「令和」が始まった5月のタイミングだったことも含めて、ヒットの仕方の変化を象徴する曲だなと思います。

─その変化を反映するように、近年はチャート集計の仕方も変わってきましたよね。

柴:2010年代初頭から中盤にかけては、正直、ヒットチャートはいびつなものだったと思うんです。特典商法のせいでシングルCDの売り上げ枚数を並べたランキングが意味をなさなくなっていた。でも、ストリーミングサービスの普及によって、「何枚売れたか」よりも「何回聴かれたか」が大きな意味を持つようになった。それらの数値を反映した複合型チャートが普及したことで、実際に何が流行っているのか見えやすくなりましたよね。そんなふうにヒットのルールが変わったことによって、そこでの戦い方も変わったし、台頭してくる面々もフレッシュになっていった。そういう意味では、若いミュージシャンにチャンスがある時代になったのかなと思います。




過去5年間に、国内で最も再生された100曲を集めたプレイリスト「Go Stream」

玉置:瑛人さんの「香水」もTOP20に入ってるんですね。この曲が流行ったの去年なのに(リリースは2019年)、それで過去5年間の上位に入ってるのはすごいですね。TikTokによって、本当に売れ方が変わったんだなって。

─1位のYOASOBI「夜に駆ける」、3位のBTS「Dynamite」も去年のヒット曲ですよね。ここ1〜2年の人気曲が上位に目立ちます。

玉置:例えば誰かに曲をすすめられたときや、チャートの上位にある曲を「聴いてみよう」と思った時に、CDの時代は「実際に店舗まで買いに行く」というプロセスを踏まなければならなかったけど、今はすぐに検索して聴くことが出来るから、一旦チャートの上位に入ると長く聴かれ続ける現象が起きやすいのかもしれない。

TaiTan:その一方で、TikTokとかでハネた楽曲はSpotifyでも何十万回、何百万回と聴かれるけど、同じアーティストの他の楽曲はそんなに聴かれないケースも多かったりして。そういう現象が起きるようになったのも、この5年間だったのかなと。

柴:勢いがどこまで続くのか、「一発屋」になりかねない危うさはありますよね。

TaiTan:その点、リル・ナズ・Xは上手かったですよね。最初に(「Old Town Road」で)話題になった頃は「SNSの使い方が上手い」みたいな触れ込みでメディアも取り上げていたけど、そのあと(デビューアルバム『MONTERO』に至るまでに)二の手、三の手がちゃんとあったのはさすがだなと。

そういえばこの間、実家に帰った時に親父がヒゲダン(Official髭男dism)を聴いていたんですよ。その様子を見ていて思ったのは、ヒゲダンくらい楽曲の強度があれば「メディアの戦略でしょ」とか「SNSの使い方が上手いんでしょ」みたいな言われ方をせずにすむし、楽曲の強さだけでチャートを支配し上の世代にもちゃんと届くようになっているのだなということ。「TikTokのせいで曲がまともに聴かれなくなった」みたいな言い方をする人は多いけど、強い楽曲はちゃんと残るんだなとも僕は思いますね。


Photo by Kana Tarumi

─ちなみに、Dos MonosとMONO NO AWAREはSpotifyにアーティスト登録したことでどんなメリットを感じていますか?

TaiTan:やはり「プレイリストきっかけ」で僕らの音楽を聴く人が増えたことですね。基本的に再生回数を活動のファーストプライオリティにはしてないですが、「このプレイリストに載りたい」と思うことはあります。例えば欧米の著名なキュレーターが作成するプレイリストに入ると、予想外のところで突然リスナーが増えるみたいな現象は、これまでなかったことです。僕ら、デビューしたばかりで全くの無名だった頃も、アメリカの音楽評論家がプレイリストに入れてくれたんですけど、それで一気に注目されるようになって。そういう「出会い」に開かれたプラットフォームになっているのはいいなと思います。

玉置:Spotifyが上陸したことで、今や「プラットホームがシーンを作っている」といっても過言ではなくて。例えば、僕らが一方的に「かっこいいな」と思っているような、一度も会ったこともないアーティストのページに、MONO NO AWAREが関連バンドとして紹介されていたりするんです。そうすると、実際の交流がなくても音楽的に「つながり」があると認知され、思いもよらなかったところで僕らの音楽を聴いてくれている人がいる現象が起きていて。そういう意味では、僕らもSpotifyに登録したことによる恩恵は受けていると思いますね。

TaiTan:「俺らの音楽って、ここに位置付けられているんだ」みたいに驚くこともあるよね。例えばDos Monosの関連アーティストとして小袋成彬くんやJPEGMAFIA、(コラボ経験のある)ブラック・ミディが並んでいたりして。自分たちは「ヒップホップの人間じゃない」と認知されていることを、自分たちの「肌感」として分かっているしそこを狙っているのだけど、そういう姿勢をSpotifyが可視化してくれたことがある種の「尺度」になる。「間違った方向には行ってないな」という確認もできますしね(笑)。

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