米政府、幻覚剤研究に約4億5000万円の研究資金提供

しかし、資金援助を受けているとはいえ、研究が実際に政府からの承認を得ることは極めて難しいという現状がある。承認はそれ自体で数百ページに上ることもある。ケタミンの慢性疾患、急性疼痛疾患への適用を独自研究するベクソン・バイオメディカルの共同創設者のジェフリー・ベッカー氏は、「研究のためには極めて有能で、思慮深くある必要があり、実績が必要です。助成金の申請が完璧だとしても、支給には6ヶ月以上かかりますし、実際に手元に届くのはそれから2ヶ月はかかります」と語る。

ジョンズ・ホプキンス大学に助成金が認められるまではおよそ2年かかった。国立衛生研究所は最初、計画書の変更と再提出を要求、その後半年経ち、再承認の手続きを始めた。国立衛生研究所は迅速にやっているように見えたが、その期間に研究資金が尽きてしまった。言うなれば、幻覚剤の研究に対し、国の金庫がオープンだというわけではない。さらなる研究に国からの支援が物理的に必須であることに加え、シンボル的な意味でも重要であることは間違いない。

国による助成金を用いた研究は、政治家たちが幻覚剤を合法なものと見做すためだけでなく、研究者や研究機関のサポートを集めるためにも極めて重要である。ベッカー氏は「幻覚剤の研究を見捨てた研究者たちの多くは、この研究に携わることを、自身のキャリアにとっての潜在的自殺行為だと言います」と語っている。

このことはジョンソン博士も経験してきたことだった。ジョンソン博士が若かった当時、同僚たちに幻覚剤の研究に興味があることを話すと、皮肉たっぷりに「幸運を祈るよ」と告げられた。大学において正規の教授となり、研究機関で職に就くためには国立衛生研究所の資金援助が必要であり、当時それは不可能に思われた。博士は、数十年前から衰退しつつあった幻覚剤研究について「まさに私の職を奪おうとしていたもの、いわばキャリアキラーのようなものでした」と語る。

こうした年月を過ごしてきた彼が今願うことは、今回の承認がサイケデリック・ルネサンスのためだけでなく、過去の彼のような研究者たちに良い影響を与えることだ。彼は「この承認は研究者たちにとって多くの意味があることです。国立衛生研究所の資金提供の可能性があるというだけで、若い研究者たちはそこでキャリアを築いていくことができます」と語る。

From:U.S. Government Funds First Therapeutic Psilocybin Research in 50 Years

Translated by Kazuhiro Ouchi

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