米政府、幻覚剤研究に約4億5000万円の研究資金提供

5月に行われた上院の予算公聴会で、国立衛生研究所前所長のフランシス・コリンズ博士は、同研究所と関係各機関はメンタルケアを目的とした幻覚作用を持つ化合物について、厳密な調査をする必要があると述べた。コリンズ博士は、幻覚剤の研究がこれまで長期にわたって違法とされてきたことを認めつつも、「脳の働きについてのこれまで行ってきた研究の結果、幻覚作用を持つ化合物は調査目的上、また、医療目的での使用するための潜在的な可能性があることを発見できた」と述べた。薬物乱用研究所もまた、研究の承認を求めたジョンソン博士に対し、同様のことを告げた。

ジョンソン博士は「私は彼らに「幻覚剤の治療目的の可能性を研究するなんて時間の無駄だというなら、知らせてくれてありがとう」と伝えました。私は、過去にこうした研究が中止されたのは幻覚剤だからという理由でも、政治的な反応であったわけでもないと告げられました」と語る。

議会においても一定の動きがあるようだ。幻覚剤について研究する非営利組織の薬草連合(Plant Medicine Coalition)の創設者で代表のメリッサ・ラヴァサニ氏は、大きな目標として今年中に100万ドルの研究資金を獲得することを掲げていた。彼女は、現在のサイケデリック・ルネサンスにおける同分野への国からの投資は過小評価されていると考えている。彼女とそのチームは、今年は資金を獲得することができなかった。彼女が言うには、議会ではバイデン大統領による55億ドルのインフラ投資など、その他の大きな項目があまりに多かったとのことだ。その一方、彼女らは100人以上の議会関係者と面会し、史上初となる、議会所属の幻覚剤に関わる幹部会発足に向けた基盤を築くことができた。

ラヴァサニ氏は、今回の資金提供にはメンタルケアのための幻覚剤研究のリソース確保以上のものがあると語る。確かに、国から助成金の出る研究は、製薬会社が新薬を開発し、市場に出すための助けにもなる。ジョンソン博士はすでに、製薬ベンチャーのマイデシンと協力し、喫煙依存者向けのマーケットにおけるサイロシビンの確保に動いている。しかし、ラヴァサニ氏によると、研究を製薬会社に頼り切るのは、例えばうつ病の治療向けのサイロシビン研究のように、極めて限定的な研究になりがちだとも言う。また、投資家による投資の対象となれば、利益の出る保証が必要だ。しかし小規模な研究において、幻覚剤は身体的な疾患、例えば神経変性症から炎症といった症状に至るまで、有用性が示唆されているものも存在し、これらの研究にも大きな価値がある。

ワシントンD.C.における自然由来の幻覚剤の合法化運動でイニシアティブを取ったラヴァサニ氏は、「幻覚剤をヘルスケアシステムの一環として見なすためには、より広範な分野を調査する必要があり、さらに社会的に良い影響を与えることを目標に研究を行う必要があります。政策担当者らがこうした研究を見るとき、彼らは研究が政府により資金援助されているかに注目するのです」と語る。

Translated by Kazuhiro Ouchi

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