BMGのCEOが語る、IPOとアーティストにとって平等なシステム 

BMGのハートウィグ・マズフCEO(Eva Luise Hoppe)

BMGのハートウィグ・マズフCEOがアーティストのさらなる平等の実現、IPO(株式公開)の可能性、さらにはティナ・ターナーと交わした歴史的な契約について語ってくれた。

BMGのハートウィグ・マズフCEOには、音楽業界をリードする大手企業を相手に競争力を保ち続けるための素晴らしいアイデアがある。それは、アーティストを平等に扱うことだ。

「私たちの最大の脅威は——致命的とまでは言わないまでも——他社が善良かつ公平、そして透明になることです」と、マズフはBMGのビジネスモデルについて正直かついたずらっぽく述べた。「その時点で、私たちの取り組みの多くは特別さを失ってしまいます。市場のリーダーが『我々だっていい人になりたいんだ。我々は金持ちになったのだから、これからは愛されたい』と思った瞬間から、私たちは競争力を維持するためにどうするべきか真剣に考えなければいけません」

長年にわたり、BMGは自らを大手レコード会社のシステムの代わりとなるアーティスト・フレンドリーな企業だと宣伝してきた。ドイツを拠点とするレコードおよび音楽出版社のBMGは、所有権の少ない短期契約を積極的に結んできた。さらに同社は、作曲家の収益に食い込むレコード業界の典型的な契約条項である「コントロールド・コンポジション・クローズ」の撤廃といった透明性を原動力とする活動にも取り組んでいる。

音楽業界にはびこる積年の人種の不平等を解消しようという声が高まるなか、BMGは他社よりもダイレクトな行動に打って出た。内部監査を実施し、過去に傘下レーベルが買い取った黒人アーティストの楽曲のロイヤリティの格差を調べるためだ。まもなくして同社は、4レーベルが黒人アーティストに対し、黒人以外のアーティストと比べてかなり低い金額を支払っていたことを知り、こうした格差の是正を誓った。

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音楽著作権市場が加熱するなか、BMGは買収にも力を入れてきた。米投資ファンド・KKRとパートナーシップを結び、一流の楽曲コレクションを追い求める一方、ミック・フリートウッドやティナ・ターナー(米現地時間10月5日時点)といった大物アーティストの著作権を獲得してきたのだ。

ティナ・ターナーの全楽曲の著作権売却を前に、米ローリングストーン誌はマズフCEOにインタビューを行った。音楽業界の現状、今後の楽曲獲得、刻々と変化する業界においてアーティストの平等を掲げることなどについて語ってもらった。

ーー音楽業界全体は、アーティストを平等に扱っていますか?

いいえ。ですが、それは一人ひとりの悪意によるものではないと思います。私たちはただ「この市場の一員になりたいのなら、我々の言うことに従い、我々が提示する条件に同意しなければいけない」という考えにもとづく慣習とともに仕事をしているのです。業界関係者一人ひとりがアーティストを助けたいと思ったとしても、その背後のシステムが「ロイヤリティをカットして、より収益性の高いモデルを開発したらどうだ?」とささやくのです。

ーー近年、音楽業界では透明性やアーティストに対してより公平な契約といったことが話題になっています。音楽業界が選択できるとしたら、こうした変化は実現すると思いますか?

いいえ。私たちは、ビジネスをする上で競争力を維持するための構造的な要素として透明性を導入することに誇りを持っています。それは、変化するための絶対的なニーズです。大企業は中小企業と比べると動きが遅いのに加えて、彼らは必要に迫られなければ動きません。信頼される企業になることは、BMGの競争的な理念なのです。私は、目覚めた瞬間から「善人であろう」という理念を抱くわけではありません。今後は、アーティストに対して「我々があなたたちに負っているものを手に入れるために、あなたたちは戦う必要はないのです」と言えるような関係性において強力な競争的要素になると思っています。

Translated by Shoko Natori

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